2009年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  黒崎 威一郎

【特別賞】ペットボトルの水を飲みながら

僕は今日も自動販売機で、百二十円のペットボトルの水を買って飲んだ。

部活動帰りに、冷たくて清潔な水をごくごくと飲むと、暑さと疲れでくたくたになった体がシャキッ

とする。きっと細胞のすみずみにまで水分が行きわたり、体が大喜びしているのだろう。家に帰れば、蛇口からいくらでも出てくる水を、大切な小遣いを使って、僕はこうしてよく水を買って飲んでいる。

しかし、僕の祖母は、ペットボトルの水など一度も買って飲んだことはないらしい。「もったいない」

が口ぐせの祖母には、とてつもないぜいたくだと思えるのだろう。

日本人が、ペットボトルに入った水を、当たり前のように買って飲むようになったのはいつの頃からな

のだろう。

水はお金を払って飲むものだという世の中は、本当によい世の中なのだろうか。

水道の水をがぶがぶと安心して飲めるのなら、それも、昔の井戸水がそうであったと言われるように、

冬温かく、夏冷たい水を安心して飲めるのなら、どんなにかいいだろう。

僕たちは、水道の水が、実際にどのようにして各家庭に届くのか、まったくというほど知らないし、

あまり関心ももっていない。

時によっては、消毒のにおいがしたりして、なんとなく不安になってしまうのだが、水道の水をわたし

たちに供給している人は、多分いろいろな苦労があるのだと思う。

わたしたちは、家の蛇口までどのようにして水が届くのか、もっとよく勉強しなければいけないと思

う。

毎日の生活の中で、水ほど大切なものはない。しかし、あまりにも身近過ぎて、水をありがたいとは思

わなくなっている。だから、シャワーを出しっぱなしにしたり、歯みがきをしながら、蛇口を止めなかったりすることに、あまりもったいないという気持ちがないのだと思う。

僕自身が買ってまで飲む、この貴重な水。蛇口から出る水も、ペットボトルほどではないけれど、お金

を払っている。その水を供給している人がいる。当たり前のように使っていてはいけないのだと、冷たくておいしい水を飲みながら、僕は思った。

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