【ざぶん文化賞】山の水、川の水、海の水
あるところに一つの国がありました。そこには山も川も海もあり、人々はとても幸せでし
た。ところがその国には、三つの全く違った水がありました。山の水、川の水、そして海の水
です。山の水が言うには、
「川や海の水なんかよりも私の方がいい水に決まっている。なぜなら私はどちらよりも高い
ところにいるのだから」
一方、川の水の場合は、
「高さや広さなんて関係ない。普通が一番。よって私が一番いい水である」
そして最後に、海が言うには、
「私は山の水や川の水なんかよりも、だんぜん広く美しい、それからもの知りである。毎日
波にゆられ世界中を旅して回っているのだから。よって私が一番いい水である」
このように、三つの水はいつも自分が一番いい水だと思っていました。
そんなある日のことです。空から三つの水たちを見ていたのでしょう。突然、雨がふり出
し、たくさんの小さな雨つぶたちが三つの水たちに言いました。
「君たちはなぜそんなに一番の水でありたいの。君たちには君たちにしかないものがたくさ
んある。山の水はとても清潔で山の木や動物たちを育てているし、川の水は国の人々に水を
分け与えている。海の水は多くの魚たちを育て、海で捕れた魚は人々に食べられている。三
つともだれかに感謝されているんだ。それをほこりに思いなよ」
気がつくと雨はやんでいて、上にはすっかり青空が広がっていました。
「今のはいったい、何だったんだろう」
山の水、川の水、海の水が口をそろえてつぶやきました。
次の日からは、三つの水は競い合うことをやめて、雨つぶに言われた通り、自分にしかで
きないことを一生けん命やるようになりました。山の水は木々や動物たちを育て、川の水は
人々に水を分け与え、海の水は魚たちを育てる。
こうして山の水、川の水、海の水は毎日だれかに感謝され、本当にいい水になることがで
きました。


