2018年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  一瀬 美那子

【特別賞】みずのうたごえ

ピチョン、サラサラ、ざざあっ、パシャン

わたしたちはたくさんの歌を歌う。人間がないたり、わらったり、おこったりする時と同じように。わたしたちは、たくさんなかまがいるの。雨になったり海や川、人間たちがおふろに入ったり、手をあらったり、プールの中にもね。そしてあなたたち人間が生まれてくる時も。わたしたちはむかしからずうっとずうっとそばにいるんだよ。だけどいつもそばにいすぎるからあまり分かってくれないのかなあってたまにかなしくなる。わたしたちはそんな時かなしく歌う。空から雨になってそれでも人間が言うことを聞いてくれない時はおこるんだ。たくさん雨をふらせて。われをわすれておこってしまった時、人間の世界はこわれていた。川たちが海たちが大切な物をのみこんだり流してしまっていた。本当はこんなことをしたかったわけじゃないのに。ひどいことをしちゃったってさらにかなしくなった。はじめのうちはわたしたちがしてしまったことがショックで何も歌えなかった。そのうちあつくてあつくてお日さまにもまけちゃっていた。そんな時ある子どもの声が聞こえてきた。「出しっぱなしあかんよ。もったいないが」って。そんなふうに思ってくれる人間たちもいるんだってわたしたちうれしくなっちゃった。いてあたり前のものじゃなくてかけがえのない大切なものだって言ってくれてるような気がした。耳をすませているとあちこちで「川にごみなげたらあかんよ」とか「海をきれいにね」って聞こえてきた。人間たちは力を合わせていぜんわたしたちがこわしたものやうばってしまったものを一生けんめい直していた。人間たちのそんなすがたを見てまた歌いはじめたの。今どはやさしくつつみこむようにおだやかにね。

時にはサラサラ、ピチョン、ざざあってやさしく歌う。時にはバシャバシャ、ザバーンって楽しく歌う。時にはドドドド、ザザザザーってはげしくおこるように歌う。ほら、何だかまるであなたたち人間のお母さんといっしょじゃない?時にはおこったりかなしんだりするけれど本当はとってもやさしいんだよ。だってわたしたちは生きもの全てのお母さんなんだから。だからやさしく歌う。

ピチョン、サラサラ、ざざあっ、パシャンって。

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