2005年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  市村 淳一

【ざぶん文化賞】私とおじいちゃんの海

「ざぶんざぶん」

海岸のすぐ近くに私の家があるので、耳を澄ますと微かに波の音が聞こえてきま

す。漁師をしている私のおじいちゃんは、毎日海の波の音を自分の耳で聞いて、波

の荒れ具合を調べてから漁へ出かけます。私にとって、それは海とおじいちゃんが

会話をしているようにも見えます。

 

私が小さい頃、海で泳げるように一日中練習した日も、小学生の時に友達と海

藻をとって遊んだ日も、こうしておじいちゃんが波の音を聞いてくれていたことを、

私は知っています。だから、安心して海へ行くことができました。ジリジリと照り

つける太陽に背を向けて、ごつごつした岩場に座りながら、海に足を入れます。

背中にあたる太陽の熱と、足首に広がる冷たい水のバランスが不思議なくらい気

持ちがよくて、大好きでした。

 

それだけでなく、おじいちゃんは魚や貝や海に関することに詳しくて、夏と冬

にとれる魚の違いや、海が青色の理由など、その他にもいろんな事をたくさん教

えてくれました。ヒトデは、海の底にあるゴミを食べます。そのおかげで、少しず

つだけど確実にゴミを減らしてくれるらしく、漁師達の間では「海の掃除屋」と

呼ばれていることも、おじいちゃんが私に教えてくれた事のたくさんの中の一つで

す。

 

小学生の時おじいちゃんの船に乗せてもらって漁へ連れて行ってもらったことが

あります。そこで、網にかかっている魚をはずすところを見せてもらいました。私

は、その時初めて生きて動いている魚を見ました。今までスーパーで見ていたよう

な魚とは違って、ピチピチしていました。海の魚は、すごく元気がよかったです。

それから、海に落ちている発泡スチロールのゴミまでもが網にかかってしまってい

て、外すのがすごく大変そうでした。発泡スチロールは自然に分解することがで

きないので、海へ捨てて自分の手元からはなくなっても、海には永久に残ってしま

うそうです。

 

その後は、少し浅めの海に船を止めてもらって、船の一番高い場所にのぼりまし
た。そこから海を見下ろすと、太陽の光が海に差しこみ、その光が海面に反射し

てキラキラ輝いていました。それは、海の話をしてくれるときのおじいちゃんの目

に似ていました。

 

 

私は、たくさんの経験と感動をこの海で体験しました。また、海とおじいちゃ

んとの会話によって、守られてきました。私は、これからも、必ずこの海でたくさ

んの事を学ぶと思います。この海だからこそ出来た事、出来る事もあると思います。

そんなかけがえのない海とおじいちゃんが、私は大好きです。こんな、当たり前の

気持ちを海の恵と、豊かな自然が、私に改めて教えてくれました。

「ざぶんざぶん」

今日も、微かに心地よい波の音が耳を澄ますと聞こえてきます。そして、今日も

海とおじいちゃんの会話が始まります。

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