【奨励賞】雨降村
昔、とある島国の山中に一つの村があった。そこには水を操り、雨を呼ぶことができる妖怪が住まうと
いう伝説があった。その妖怪の名は『あめふらし』
「おい、傘守ぃ、滝行くぞ」
「おーう」
ここは他の村から二十五里離れた山に囲まれた村である。この村の奥には滝があり、その滝つぼには百
年生きているといわれる大イワナがいる。そのイワナを釣り上げることが村の釣人の目標だった。
傘守はイワナを釣ろうとする子の一人だ。
「よし、今日こそ釣ってやる」
「いーや、俺が釣る」
傘守はいつも友達とこうしてつりに来ているのであった。 「明日は夏祭りじゃ。今日はこのへんにしとくぞ」
日も遠く西に見える。
「ち、ちいとまて、あともう一時だけ。あすこにおるんじゃ。儂のえさをつついとる。
「明日の祭りのために役人もくると。こんなところ見られとうないぞ」 「喰ったぁ。おい喰いついたぞ。重ぇ。手伝ってくれ」
傘守は、ついにイワナを釣り上げた。その事は村に伝わり、祭りで神社にお供えすることになった。
ところが次の夜、祭りのなか、山のむこうから来た役人に村長がもてなしをしていると、
「何だ、飯はこれだけしかないのか。儂は山をこえて来ておるのじゃぞ。何か出せ」
「いえ、私共にはこれだけしか・・・」
「何をぬかす。むこうに大きな岩魚がおるではないか。あれを喰わせよ」 「あ、あれは出せませぬ。なにとぞ・・・」
役人は気にせず、共の者に焼かせて食べてしまった。
「貴様、儂の釣った岩魚を、よくも」
傘守は役人に飛びかかったが、軽くあしらわれた。
「あー御苦労、御苦労。美味じゃったぞ。はははは」
役人はそう言って村長の家を出た。
「くそう」
次の朝、村はざわついていた。村の川、井戸、あの滝さえも水が枯れていた。 「天が怒ったのじゃ。あの役人が供え物を喰ったからじゃ」
役人達は石や枝などを投げられ、帰って行った。
それから傘守は神社に拝むようになっていた。
「あの役人を殺して下され。岩魚、儂の岩魚を喰らったあの役人を」
傘守は七日間拝み続けたが七日目には願いが変わっていた。
「水を、雨を降らせて下され、どうか」その時、神社の御神体が光りだし、傘守の体も光りだした。
「体をかしな」
そう聞こえたと思うと意識がなくなった。
そこには傘をかぶった少年がいた。
「雨が降ってきたぞ」
「おおっ」
滝も川も復活し、大洪水がおこった。
空には傘をかぶった子供がいた。
「ん・・・」
傘守は目を覚ました。家に帰った傘守は親に言った。 「この村に雨を降らした夢を見た」


