【奨励賞】天国への水
天国のじいちゃん、元気ですか。
じいちゃんがいなくなってから一年が経ちます。あの頃小学六年生だった私も中学へ入学しました。入
学式の朝、真新しい制服に鞄を持ってじいちゃんに報告したのを覚えていますか。今は中学一年生として部活に勉強にとがんばっています。小学校とは何もかもが違って苦労することもあります。着慣れない制服、重たいカバン、バドミントンの練習など、初めてのことなので楽しくもあり、不安な所もあります。
じいちゃん
あれから夏がきて秋、冬が過ぎ春になり、今はまた夏が巡ってきました。そしていつもじいちゃんが眺
めていた、この葛川の風景は今も変わらず美しいままです。
ところで、じいちゃん、ばあちゃんが毎日仏壇に供えているお茶は飲んでいますか。生前はお茶が大好
きでよく飲んでいましたね。
「この葛川の水、山からの水でとってもめんだ。澄んでいて、清流からの水だはんでな」
とよく話していましたね。
ばあちゃんはいつも仏壇の前で話しかけているけれど、聞いてあげていますか。もう答える事は出来な
いと思いますが、でも心の中で、私はばあちゃんが何を話しかけているか良くわかるし、じいちゃんの
気持ちもよくわかります。
じいちゃん、この地域に流れる水が地域の人やばあちゃんの支えになっていることを、つい最近発見す
ることができました。まさしく宝の水です。その三つの水の話をします。
まずその一つの宝の水は、花がすくすく育つ水です。ばあちゃんは私が育てたアザレアをあげると喜ん
で育てます。サボテンも育てています。この頃は形を整えたいようで、ばあちゃんはいつも一つ一つ丁寧に眺めては、水やりを欠かせません。その水やりで葉の緑がとてもきれいになり、わたしの心や家族の心を和ましてくれます。
二つ目の宝の水は、毎日、お茶と一緒に供えている漬け物です。この水が漬物の味を引き出すことです。
葛川の水と野菜が織り成す最高においしい味だということを発見しました。ばあちゃんの漬物はまず大
根や人参等の野菜を使って、何度も水加減、塩加減をみながら作ることです。野菜はきれいな葛川の水
で何回も何回も丁寧に洗い、重石を乗せて樽に漬けていきます。じいちゃんがいつも美味しいといっていた野菜がしんなりしたら、溜まっている水分を捨てて味つけをします。
葛川の自然とばあちゃんの味は絶品で、いつまでもこの味を守り続けてほしいです。
三つ目の宝の水は心を癒す水です。この間兄の俊明が一ヵ月間の休みをもらって帰って来ました。体調
を崩して、元気のない姿に家族はびっくりしました。元気のない兄でしたが、中学校を訪問したり、キャンプに参加したりするうち、少しずつ元気をとりもどしました。おいしい空気とおいしい水が、兄の心を癒してくれたのです。葛川の自然ってすごいと思いました。
じいちゃんは七年前から入退院を繰り返していたものの、亡くなる三日程前までは本当に元気でした。
しかし母がいつものように見舞いに行くと状態が急変していたそうです。
家に居た私と祖母を母が迎えに来て、その事を教えてくれました。母は私に寄りかかり泣いていて、
私はこんな母の姿を見るのは初めてでした。この時大切な人を失う事は本当に悲しいんだなって思いま
した。でも泣けませんでした。今泣いたら皆に心配をかけるし、母を支えることができなくなりそうだったからです。
皆が帰った後私は
「祖父には友人がたくさんいる。祖父は皆に好かれていたんだ」 と驚きました。
この事があって私は精神的にも強くなった気がします。きっとじいちゃんが見守っていてくれたからだ
と思っています。ありがとう。
私は今まで祖父からたくさんの笑顔、優しさ、思いやりをもらいました。普段はあまり話せなかった
けど、じいちゃんを私は尊敬しています。だから私は祖父のように笑顔を絶やさず、優しくて、思いや
りのある人になろうと思っています。 最後になるけど、じいちゃん
葛川の四季がかもしだす風景は、じいちゃんが居たときと何一つ変わっていません。家から見える杉の
木や近くを流れる川の音、全てがそのままです。
この手紙を書いて改めてじいちゃんの存在と自然の水を見つめ直すことができました。
天国への水、それはじいちゃんとの大切な宝の水です。
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