2016年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  中村 基克

【特別賞】水の力

私は水が好きだ。ぷかぷか浮いたり、ピチャピチャ水をかけ合ったり、泳いだり、流されたり、とて

も楽しい。祖父母の家が宮城県塩釜市にあり、一年に一度、海で遊ぶのを毎年楽しみにしていた。だか

ら、水が関係して、人が亡くなったというニュースを聞いてもあまり実感がなかった。

だが、二〇一一年三月一一日、私が小学校二年生の時、水がどれだけ恐ろしいものかが分かった。午

後二時四六分、地震が来て机の下に隠れた。あまり揺れなかったので心配していなかった。学校ではテ

レビも見られて停電していなかった。いつものように家に帰ったのだが、家では父が怖い顔をしてテレ

ビを見つめていた。テレビには東北の地震と津波の様子が生々しく放送されていた。海が茶色く恐ろし

い色になり、次々と建物を流していった。ほとんど揺れず被害のない富士見町、海もない長野県に住ん

でいる私にとって、想像もできない映像を目にし、その場に立ちつくしてしまった。どうしてこんなこ

とが起きているか全くわからなかった。塩釜の祖父母、いとこが心配だった。電話も通じず、生きてい

るかすらわからない状態で、とても不安だった。やっと三日目に電話がつながり、幸いみな無事だと聞

き、とても安心した。

その年のゴールデンウィーク、私は家族と祖父母の家を訪れた。祖父母の家は海から少し遠いため、

津波の被害からは免れたものの、家へつながる階段や、家の壁には大きなひびが入っていた。長野の私

の家は被害が何ひとつなかったため驚いた。みんなで一緒に直した。次の日はいとこの家へ行った。海

辺で、車から降りたとたん魚の腐ったにおいが鼻を刺した。いとこの家は津波で流されてしまい一階は

泥しかなかった。驚いて言葉が出なかった。海が憎たらしかった。この海が家を飲み込んでしまったの

かと思うと怖かった。周りの建物もみんな流されてしまい、ひっくり返った車が転がり残されていた。

これが東北の現状だと目で見て初めて実感した。テレビで見ていたのと、実際自分で見たのは恐ろしさ

が全く違った。

水がこんなにも恐ろしいと感じたのは初めてだった。いつもは優しい海が、こんなにも鬼のような姿

に変わることがとても恐ろしかった。水の恐ろしい力を感じた。水は楽しいものでもあるが、危険なも

のでもあることを実感した。

水がなければ人間は生きていけない。水は人間の体の六〇パーセントを占めている。人間にとってな

くてはならない存在なのだ。いつも、手を洗ったり、飲んだり、料理に使ったり、お風呂に入ったり、

当たり前のように使っている水。しかし、その水は、人間の命を一瞬にして奪ってしまう恐ろしいもの

でもあることを忘れてはいけない。

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