【特別賞】虹の川
私の部屋は、川の上に少しつき出しています。朝、目を覚ますと、キラキラとまぶしい光りが川いっぱ
いに広がって、向こうの山も、向こう岸の家も金色に光りかがやいています。まどを少し開けて「お日さま、おはよう」と、大きな声でごあいさつ、すてきな一日の始まりです。
雨の朝は川の表面に雨がはじけて、今度は銀色の世界。夕やけに川は真っ赤にそまり、トンボがいっ
ぱい。そして雲一つない空は青い青い川を作って、石にあたって白いしぶきをあげている所だけが、かわいい音をたてています。
朝、昼、夕方、次から次へとその表情をかえて、一分の休みもなく流れる川、何百年も前からそうして
流れてきているのでしょうか。そして、今度は何百年も先まで、また流れていくのでしょうか。生きている川、美しくやさしい川、子ども達がワイワイさわいで遊んでいます。おじさんたちが行ったり来たり、楽しそうにアユをつっています。この川のもう一つ大事なことがあります。とてもすてきな、とても大切なことなのです。
この川を上流の方へどんどん行くと、矢部村というところに着き、そこに日向神ダムがあります。八
四・三キロメートルという大きなダムです。しゅういは遊歩道になっていて、何百本というさくらの並木がつづきます。
春はピンクのうすがすみ、夏は緑、秋は紅葉、まるでいまにも八女津ひめが出てきそうな風景で、八
女に伝わる伝説をすごいなと思います。そして、そのダムの水は私たちをいつも助けてくれます。
ある日、急にサイレンがなりました。ダムの放水のしらせです。ダムの水量の調節です。ときどきそう
いうことをしながら、ダムはただ、だまったままはたらいています。しゅういにある三つの発電所を回
し、農業用水のたりない時の水を流し、大雨こうずいの調節をして、私たちの家をさいがいから守って
くれます。築後平野の守り神ダムよ、ほんとにありがとう。
でも、もう一つ、わすれてはならないかなしい事があります。それはこのダムができるために、ギセイ
になってくださった人々のことです。ダムにかかった部落の何十けんかは、ひっこしをしてくださったとか、そのお家は今でもダムの底に沈んでいますか。小学校も沈んでいるとききました。さいわいケガした人などはなかったらしいけど、家がなくなるのはどんなにかなしかったことでしょう。ダムにうつる朝夕の虹色、それはかなしみの色、私の見る川の虹色とは、少しちがうかもしれない。
私達の毎日をささえてくれるダム。そのダムをささえるために手つだってくださったみなさん、ありが
とうございます。私達は、そのことをけっしてわすれてはならないと思います。今日もやっぱり朝から虹色の川は流れています。


