2013年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  小辻 希

【特別賞】未来のために

「頑張ってね」

「戻ってきてね」

小学三年生の頃、私達の学年は馬見ヶ崎川に鮭の稚魚を放流しました。卵の頃から育て、ずっと生長

過程を見てきました。中には死んでしまったり、卵から生まれなかった赤ちゃんもいました。そんな悲しい思いをしながらも、みんなで大きくなる様子を見守っていました。そしてやってきた放流の日、みんなが一匹一匹に話しかけ、帰ってくる日を楽しみにしながら川へ放してい

ました。鮭は自分が生まれ育った場所に戻ってきて、卵を生む習性があります。どこかの学校で放流した鮭が戻ってきたという話を聞いたこともありました。

「帰ってくるのは四年後だから、私達は中学一年生だね」 「部活帰りに毎日行こうかな」

などと友達と話してワクワクしていました。

今、私達は中学二年生。しかし、鮭が帰って来たという話は一向に聞こえてはきません。あくまで推測

ですが、おそらく戻ってはこないでしょう。死んでしまったのです。

今回は東日本大震災の影響もあるので、しょうがないかもしれません。ですが、本当にしょうがない

のでしょうか。鮭が帰ってこなかったのは事実です。ダムなどの影響により、海へたどりつけなかったり、川の水が生きていけなくなったりした鮭もいると思います。鮭だけではなく、川や海にいるたくさんの生物がたいへんな状況におちいっていると思います。そして、この現状は人間がつくりだしています。

人間は戦後、約一〇〇〇万ヘクタールの人口造林地をつくりました。そして今では、八〇〇万ヘクター

ル以上が放置人工林となっています。人工林はおもにスギなどの針葉樹でできています。針葉樹は広葉

樹とくらべ、日光を通しにくく、水を吸収する能力が低いので、川に流れる水も減るということにつな

がります。山からの水が減っているのは、元をたどると人間の身勝手な行動によって起きてしまったことなのです。

今、困っているのは川や山に生息している生物ですが、このまま悪化していけば水不足になり、人間

も生きられなくなります。目先のことだけを考え、今まで保たれてきた自然環境をこわしていけば、や

がては生き物が住んではいられないような環境ができてしまいます。

自然と生き物と人間が共存し、助け合って生きていくことを、これからの私達の、そして日本の大き

な課題としていくべきだと、私は思います。

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