2016年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  坂本 真由美,  未分類

【特別賞】海から学んだこと

「あれ、溺れとるんじゃない」

祖母が言った。びっくりして振り返ると、遠くで手をばたつかせ、もがき、まさに溺れた人、妹の姿

が見えた。

この日、私たち家族は、祖母と一緒に、毎年恒例のお墓参りからの海に来ていた。海があまり好きで

はない私は、少し泳ぐとすぐに海からあがり、のんびり座っていた。海が好きな父と妹は、長い間海に

浮かんでいた。

「いつまで入っとんかねー」 と話していたその時。

「あれ、溺れとるんじゃない」

祖母が言った。びっくりして振り返ると、遠くで手をばたつかせ、もがき、まさに溺れた人、妹の姿

が見えた。していたはずの浮き輪が外れている。一緒に泳いでいた父は違う方を向いていて気付いてい

ない。母が走り出そうとした瞬間、父が妹の方を見た。

「良かった。気付いた」と私はほっとした。父が妹を上に押し上げるまでの数秒間。ほんのわずかの時

間だったのに、とても長く長く感じた。後で父が言っていた。

「足がつかない場所だったから、なかなか近付けなかった。浮き輪を投げても、パニックで目をつぶっ

ていたから、つかまることはなかったと思う」

妹は全く泳げない訳ではない。父までの距離は数メートルだった。妹は、父の所まで浮き輪なしで泳

いでみようとしたらしい。しかし、足がつかない怖さからパニックになったのだろう。そして私がびっ

くりしたことがもう一つある。周りには沢山の人が泳いでいたのに、誰も妹が溺れていることに気付か

なかったのだ。人が多いとか少ないとかは関係ないのだと知った。 「絶対に大丈夫」

なんてことはない。このことを私たち家族は改めて知った。浮き輪をしているからとか、小さい子で

はないからなんて、大丈夫の理由にならない。少しの油断が事故を招くことになる。水の事故は本当に

一瞬のことなのだ。常に危険を予測しながら楽しむことが大切だ。

今回は怖い思いをした妹だけれど、海は怖いものだと思わずに、これからもいつものように元気に楽

しんでほしい。妹の無事を喜び、沢山のことを学んだ今年の夏の出来事。

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