2008年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  宮永麻子

【特別賞】ちきゅう

 

その星は生まれたとき、大きな大きな丸い水の玉でした。ビー玉よりも透き通っていて、シャボン玉よ

りもまんまるで、暗い暗い宇宙のカーテンの中で、ひときわきらきらと輝いている星でした。

 

それを見つけた神様は、あんまりその星の水がおいしそうだったので、両手でちょっとすくった水を、

静かに飲みました。神様はその水をとても気に入りました。毎日でも飲みたいと思いました。

 

神様は、こんなにおいしいものを誰かに飲んでもらいたくなりました。でも、神様は一人ぼっち。辺り

を見渡しても、見えるのはビーズのように散らばった無数の星たちや、かすかに輝きはじめた宇宙のくずたちだけ。そう、神様にはお友だちもいなければ、お父さんもお母さんも、誰一人いませんでした。

 

さみしかった神様は、その星に動物という私たちのもとになるものを生み出しました。神様は、

「これを飲んでごらん」

とだけ言い、宇宙の遠くでそっと見ていました。

 

動物はおいしそうな水をじっと見つめたあと、ごくごくと音を立てて飲みました。あんまり水がおいし

いので、動物は仲間を呼びました。星の動物たち皆が、その水を心からおいしいと思いました。それを見ていた神様は、なんだか嬉しくなって、宇宙のカーテンをゆらゆらさせながら踊りました。すると、星はぽちゃんぽちゃんと音を立てながら揺れました。カーテンと息を合わせ、あっちへこっちへゆらゆらしました。それと同時に、今まで星の真ん中で深く眠っていた水が、どんどんわき出てきました。動物たちもいっしょに踊りました。

 宇宙の皆が、にぎやかに、そしていつまでも踊り続けました。

 

「ちきゅう」という水の星は、いつまでも暗闇に水の澄んだ音を鳴り響かせていました。

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