2019年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  市村 淳一

【海上保安庁長官賞】夢を泳ぐ

「シーラカンス(の気持ち)になってみろ」過酷な時代を生き延びて、子々孫々に繋いできた命。ここにきて、大ピンチを迎えている。いったいどこへ向かうのか。水の星、地球号。

古代魚シーラカンスを食べた夢を見た。もぞもぞと口の中がごみで溢れて、目が覚めた。多くの化石種によって存在が知られ、現生している種も、古生代デボン紀に広く出現し栄えたものと、形態的な差異が殆どみられない。そのシーラカンスの胃から、菓子袋が見つかった。これは夢ではない。海が、水が汚されているという、人間への警告に違いない。

水深六十メートルの海で釣り上げられたプラスチックごみを食べた魚は、海洋汚染の深刻さを無言で訴えている。」俺ら魚の身にもなってみろ」と。現に、焼いて食べた魚の胃袋から、ビニール片のような物が出てきたことがある。食物連鎖の中に、海洋汚染のゴミ達が見え隠れしている。人間は、見て見ぬふりをしてきたつけがまわってきている。

生命の誕生、生物の進化の源の海。海の日に足を入れた日本海は気持ちよかったが「ざぶんざぶんと穏やかに白い波が打ち寄せる青い綺麗な海が、いつまでも続くと思うな、人間よ」と浜辺に打ち寄せられたごみが泣いていた。

人間が化石燃料を発見し、様々な形に加工する技術を開発し、生活が便利で豊かになってから約百年。地球誕生から何億年、何万年とゆっくりゆっくり育て、守り続けてきた地球環境を、ミサイルみたいな早さと規模で、破壊し始めていることに一刻も早く気付き、対策をじなければならない。自然環境破壊による、気候変動が災害となって襲いかかってきている。近年の激甚水害もその一つだ。

奇しくも、シーラカンスの生きていた頃と同時期の動植物性プランクトンが、海中深く沈み、その堆積が地層となり、加熱・加圧されて石油となったのに、あと三十年もしないうちに世界中の魚の重さより、海中のプラスチックごみの方が多くなるという現実だ。

先日、「横浜宣言2019」がTICADⅦで採択された。その中で、海洋プラスチックごみ、海洋汚染、IUU漁業の削減、生物多様性の保全と持続可能な利用、綺麗な水と衛生、その差し迫った環境問題に対処する必要性を強調されている。まさに、今、全世界で対策に取り組まなければならないと明言している。待ったなし、赤い警告ランプがぐるぐると回っているのだ。数万年後の未来に、「胃の中にプラスチックごみの入ったシーラカンスの化石を発見」などとなったらこの時代を生きた私達の責任だ。申し訳ないでは済まされない。いや、歯止めがかからなければ、地球そのものが存在していないかもしれない。

先進国のプラスチックごみを、送り返した国の勇気。自分にできることは何だろう。エコバッグを持ち、コンビニのスプーンやストローは使わず、マイ箸を携帯する。ごみの分別もきちんとしよう。このくらいなら私にもできる。海の命を守る為に、できる一歩を皆で踏みだそう。

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