2014年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  児玉 一美

【ざぶん環境賞】もう一度、あの海へ

夏になるといつも思う。もう一度、まだたくさんの人で賑わっていた、福島の海へ行きた いと。みんなに囲まれ、太陽に照らされ、とてもうれしそうにしていた、あの海へ。

私は海が好きだ。小学六年生の時に家族旅行で沖縄へ行き、きれいな海に出会ったあの日 から。透き通ったブルー。なんて美しいんだろうと感動したことを今も覚えている。私はな ぜこんなに美しいのか気になって、砂浜にあったお店のおじさんに聞いてみた。すると、 「沖縄の海には、さんごしょうが多くいるからプランクトンが発生しにくくて、その死骸と かもないから海水が濁らないんだよ。そして、君たちが住んでいる東北よりも赤道に近いか ら太陽の光が当たりやすくて海が輝いて見えるんだよ」

と教えてくれた。当時の私にはよく理解できなかったけれど、もっともっと、たくさん海 について知りたいと強く思った。

沖縄の海には敵わないけれど、私が生まれ、私が育った福島の海も素晴らしい。泳ぐと き上がる水しぶきは、太陽の光で宝石のように見える。ゴーグルをつけて海に潜ると、魚に なった気分だ。流れついた貝殻を拾ったり、砂浜で遊んだり、福島の海には、私にとって大 切な、たくさんの思い出がつまっている。

だが、忘れることのできない三月十一日、この大好きな福島の海は津波となって押し寄せ、 多くの人の笑顔や希望、そして、命までをも奪っていった。この悲惨な出来事によって海が嫌いになった人。海を憎む人。海に向かって泣き叫ぶ人たちをテレビで見て、私は心が痛く なった。何百年に一度と言われる大津波が今起こるなんて・・・・。本当に信じられなかった。 そして、今の福島の海は原発事故によって汚染されてしまっている。誰も近づこうとはし ない海になってしまったのだ。あんなにたくさんの人の会話や笑い声が聞こえていた海は、 今はもう波の音しか聞こえなくなってしまった。これは、とても悲しいことだ。私は、今の この気持ちを、大好きな海への思いをたくさんの人へ伝えたいと思った。

私は海が大好きだ。あの頃の、活気あふれる福島の海を取り戻したい。長い時間がかかる かもしれないけれど、今の私たちにできることを考え、小さな事でも実行していきたいと思 う。

もう一度、あの海へ戻すために。

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