2010年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  青山 恵

【特別賞】志

目の前に広がるのは、広大な海だけ。船が勢いよくバシャバシャと波を立てる。建物がもう、あんな遠

くにある。真上には青く澄み渡る空。太陽に照らされ、海がキラキラと輝いている。絵に書いたような海だ。絵かきの人って、美しい場所で絵を描くから、美しい絵に仕上がるんだろうな。私はふと思った。

夏休み、私はアメリカのカリフォルニア州モントレーにホームステイをしに来た。モントレーは私の住

んでいる七尾と地形が似ている。それが七尾と姉妹都市になった一つの理由でもある。来てまだ数日しか経っていないが、あらゆる所で海を感じられる市だ。

海のそばにはショッピングモール、レストラン。海を見るつもりがなかったとしても、ふと目を止めて

しまう。海沿いに行きたくなってくる。海には不思議な魅力がある。

今、私は船の上でホエールウォッチングの真っ最中。風が私のほおをなでる。ひんやりとして気持ちが

いい。

「あっ、イルカだっ」

しばらくして、友達が声を上げた。えっ、どこどこ。わあ、本当だ。一匹のイルカが、水面を見えかく

れしながら泳いでいる。そして、だんだんと船から逃げるように遠ざかっていった。あーあ、行っちゃった。しかし、よく見ると、向こうにも、もう少し遠くにもいる。

まるで自然の水族館のようだ。こんな近くで、海の生物を感じられる。私もみんなも海になったみたい

だ。アメリカに来て、テーマパークに行ったり、ショッピングをした。どれも新鮮で楽しかった。しかし、私は今しているホエールウォッチング、これが一番楽しい、と思った。なぜだろう。ショッピングのときより、心がいきいきとしている。

ここで私はふっと、いつかの父の言葉が頭に浮かんだ。

「お父さんは、海が小さい頃から大好きなんだ。あの広くて青い海を見ると、たまらない気持ちになってね。将来の夢は、大きな船の船長になることだったんだよ」

昔は船で仕事をしていた父。その時の出来事を聞くと、いつも笑顔で、いきいきと話してくれる。本当

に楽しかったんだな、ということが伝わってくるのだ。

船の上、私は空を見上げた。お父さんの気持ち、今まで何となくしか分からなかったけど、今、はっき

りと分かったと思う。私も、海大好きだよ。私は急に、遠く離れた日本にいる父に、そう伝えたくなっ

た。

船が、来た方に戻っていく。クジラが発見されたみたいだ。遅いようで、速かったな。そんな船の旅。

言葉では言い表すことのできないくらい、青くて晴れやかな海。肌いっぱい、感じた。

海を守りたい。後世ずっと。美しい姿を受け継いでいきたい。父と同様、私の心にもそんな志が生まれ

た。

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