2014年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  おおざわあい

【特別賞】祖母の家の水

「パシャッ、パシャッ」冷たくて顔がひきしまる。

祖母の家には二種類の水がある。市の水道水、もうひとつは山から直接引いてきた水。雑菌を死滅さ せる塩素消毒などを一切することなく、山から湧き出てくる自然そのものの天然水。蛇口をひねると、 いつでも山の水が勢いよく出るのだ。

夏の暑い日、祖母と畑へ行った。慣れない作業に、たっぷりと汗をかく。ひと休みすると祖母が山の 中へ続く道へと歩いて行った。後ろを追っていった場所で、透き通る水を見た。祖母はその水を私に汲 んでくれた。「ゴクン、ゴクン」喉を通り、身体の芯まで冷えていく。顔を洗うと暑さがさっとひき、 本当に気持ちがよい。

都会に住む、いとこ達と誰が一番最後まで手を入れていられるかを競い合い、手が真っ赤になった。 真夏だというのに、冬に水の中に手を入れるのと同じ感覚で、とにかく冷たいのだ。

祖母は、そばの栽培をしている。そばの実をひいて、そば粉にして、そばを打ってごちそうしてくれ る。打ちたてのそばを山の水で茹で山の水で冷やす。水の下垂るうちに食べるのがおいしいと祖母は言 う。お腹いっぱいに食べる。何度食べても飽きない。絶品なのだ。

打ちたてのそばを私の家で茹でても同じ味には決してならない。水のせいだ。

そばを食べたくなったら、祖母の家に行く。

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