2015年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  高森 絢子

【特別賞】命を育む犀川

サワサワサワ

私の家からは、いつも犀川の音が聞こえます。

私が小学校に上がる前の年、春頃に、私達家族は、犀川のほとりに建つ今の家に引っこしてきまし

た。幼い頃のことなので忘れてしまったことの方が多いですが、父の車を降りた途端、おしゃれな形の

家と緑がいっぱいの大自然が目に入り、すごくうれしかったことを今でもしっかり覚えています。そし

て、家のそばにはきれいな川。まるで公園のようだと思い、なにもかもがうれしくて、この家のすべて

が気に入りました。

私は、犀川が大好きです。水がきれいで、たくさんの生き物がすんでいるからです。

「ホタルおるぞ。見んか」

父の呼びかけで外に出てみると、ピカーッピカーッと小さな光が見えました。目をこらすと、二〜三

匹のホタルが葉にとまっています。ホタルを見るのは初めてで、あんまりきれいだったので、家族みん

なでしばらく見とれていました。どうして、こんなに小さな体で光を出せるのか、不思議で、あきずに

長い間眺めていた記憶があります。

毎年初夏の朝、近所の小屋の石かべで羽化直後のオニヤンマがはばたく準備をしている姿を見かけま

す。近くを流れる用水から上がってきたヤゴが脱皮したところなのだと思います。初めて飛び立つその

瞬間を見たくて、しばらく待つのですがなかなか飛んでくれません。毎回、遅刻しそうになり、見たい

のをがまんして学校に向かいます。その他、サワガニや、水辺でエサをとるカワガラスやセキレイの仲

間達もすんでいます。犀川や水辺の自然は多くの生き物を育んでくれているのです。

生き物だけではありません。川辺で遊ぶと、川の中に、緑色っぽい不思議な色をした石を見つけるこ

とがあります。行く度に拾い集めてきた十二個の石は私の宝物です。

川からはひんやりとした風が吹いてきて、夏でも涼しく、窓を開けると心地良い風が家の中に入って

きてくれます。犀川の自然に囲まれたこの家も私は大好きです。

昔から、犀川は、用水となって地域に入り、農業や生活に使われてきました。また、江戸時代には金

沢城の外堀にも用いられました。今も犀川を水源として上水道が引かれ、用水は田や畑を潤す大事な

役割を担い続けています。それだけでなく、鞍月用水のせせらぎは街の中の貴重ないこいの場となって

います。

私にとって犀川は当たり前のようにいつもそばにあり、生活を支えてくれる、なくてはならない大切

な存在です。

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