2018年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  百鬼丸

【ざぶん大賞】ゆきだるま、もどってこーい

朝、起きると、ぼくの住む町は真っ白になっていた。テレビをつけると「大雪」の文字がずっと出ている。外に出ると背の高さほど雪が積もっていた。

学校は休み、大人も仕事に行けず雪かきばかりしていた。こりつしたぼく達を心配しておじさんとおばさんが食料を持ってきてくれた。自衛隊がいたことやそりに灯油を積んで運ぶ人、スキーのストックを持って歩いている人もいたと話していた。こんな状きょうだけど、ぼくは雪山に登ったり、すべり降りたりして遊ぶのがとても楽しかった。

三日経ってやっと天気が晴れた。でもヘリコプターや救急車のサイレンがずっと鳴っていた。ぼくはゆきだるまを作ることにした。雪玉を転がしていると近所の人から、できるだけ大きく作ってとお願いされた。﹃道路がある場所﹄の目印にするらしい。

少しボコボコになった大きな雪玉を二つ作り、重い雪玉を一つ持ち上げ重ねた。目と鼻はチョコレートの中に入っているカプセルを付けた。口と手は木の枝、できたところで近所のお姉さんがかわいいと言ってくれた。

完成したゆきだるまのとなりにぼくは座った。夕方になっていたけど周りは真っ白な世界なので明るかった。やわらかいピンク色の空がきれいだった。

「この雪、いったいいつまであるんだろ」

ぼくはゆきだるまに話しかけた。ゆきだるまを見ながら、こいつはとけたらどこに行くのかなと考えた。

次の日、ぼくのゆきだるまはいじめられたみたいだった。雪玉をぶつけられたあとがたくさんあった。

「雪ってさー、とけたらどこに行くんや」

と一休みしているお母さんに聞くと

「今日も天気いいから、ゆきだるま小さくなっちゃうね。除雪車が来たらこわされちゃうけど、でもとけても水になってもどってきてくれるよ」

とお母さんは言った。この大雪はすごすぎて、

「もう雪はいらん」

ってみんな言っていた。雪はいつかとけて消える。だけど消えるんじゃない。とけた雪は水になってぼく達がいろんなことに使う。

「いらん雪なんてない」

次の日、ゆきだるまは小さくなっていた。枝で作った口や手は取れかかっていた。

そしてその次の日、とうとう除雪車が来た。作業が終わった後、久しぶりに道路が見えた。ゆきだるまも雪山の道もなくなっていた。大人は喜んでいたが、ぼくはさびしかった。

お母さんがぼくを呼び、除雪車でどけた雪のかたまりを指差していた。見てみると緑色のカプセルがうまっていた。

「ゆきだるまの鼻だ」

ぼくは雪のかたまりからカプセルを取り出した。カプセルを見ながら、水を飲む時、顔を洗う時、おふろに入る時、いつかきっとゆきだるまはもどって来るだろうと思った。本当の話か、嘘の話か分からなくなるよ。

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