2017年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  疋田 友紀

【特別賞】釣り人の落とし物

「よ〜い、スタート」

ざぶん、と水しぶきをあげて川に飛びこむ。そしてそのままどんどんどんどん、水の流れに身を委ね

て泳ぐ。視界の隅には、妹といとこの姿が映る。 「誰が一番速いか競争しようよ」

そう言い出したのは、私より一つ年下のいとこの弟だった。そして、同い年のいとこの、兄の方が私

の隣で泳いでいる。川の流れは速い。流れにのって泳ぐとまるで自分が魚になったようだった。目の前

に見えるのは、川底の石と白い水の泡とアユの群れ。しかし一瞬ちらりとピンク色のリボンのような物

を見た気がした。と、思っていたら、ざばーっ。誰が一番速いかという勝負の決着はついていた。

「いぇ〜い!勝ったー!」

二着だった私は、いとこの弟にそう言おうとして止まった。彼の顔がとてもひきつっていたからだ。

私がとまどっていると、

「足の裏になんかとんがった物がささった」と言った彼は顔をくしゃくしゃとゆがめたのだった。 「このピンクのリボンじゃないん」

とりあえず川から上がり、石の上に座っていた私達は、兄の方のいとこが手にしている物を見て驚い

た。それは一見してただのリボンだが、そのリボンの先には返しのついた釣り針がついていたのだ。何

かが刺さったと言っていた、いとこの弟の足を傷つけたのは「アユの釣り針」だった。そういえば、下流の方でアユ釣りをしている人の姿を見た。私達も楽しそうだねと話していたのだけれど、無情にも、その釣針のせいでけがをしてしまった。釣針は川底に引っかかっていて、そんな中で泳いでいたと思うと、ぞっとした。

改めてまわりを見渡すと、太い針金や割れたビンなどが転がっている。それらは全部、人間が置いて

いったものだ。誰がいつ捨てたゴミか分からないけれど、こうして関係のない誰かが困るのは事実だ。

川を泳ぐ魚や、その魚を食べる鳥にだって、どんな危険があるか分からない。夏休みにいとこと川遊び

に行った、という楽しいはずの思い出も、怖い思いをしたいとこには、ただ楽しかったというだけには

ならないのかもしれない。

私が願うことはただ一つ。「自分で出したゴミは自分で持ち帰る」ただそれだけのことだ。美しい川

をこれからも残していくためには、その小さな取り組みが大切だと思う。自分のことだけを考えるので

はなくて、少しだけ他の誰かのことも考えてみる。そうすることでよりよい自然が保たれていくはずだ。

私は自然が大好きだ。だからこの川にいて心が安らぐように感じる。この感動を外国の方や小さい子

などにも伝えたい。そのためにこの美しい川を私たちの手で守り、これから先の未来もずっと残してい

かなければならない。

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