2016年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  殿村 栄一

【ざぶん環境賞】生き物を育むため池

 「うわあ…」

私は思わず声を上げた。池の中が真っ赤だったのだ。私の住んでいる奈良県大和郡山市は、

金魚の養殖が盛んである。その中でも、金魚すくいでよく見られる小さな金魚「小赤」達が、

養殖池を紅に染め上げていたのだった。品種名は小赤だが、赤ではなく黒っぽいものもいる。

金魚は、多くは黒から赤に、成長とともに色が変わる。黒とはいえ透明感のある薄墨のよう

な色だ。金魚を家で飼うと、そういった色の変化も見られて楽しい。

郡山の金魚の養殖池である「金魚池」は、そもそも金魚を飼うためにつくられた池ではな

い。ため池を利用したものである。大和郡山という土地は、昔から雨が少なかった。そのた

め、貴重な雨水は、ため池にためて使ってきた。飲み水であり、洗濯に使う水であり、農業

用水であったため池が今も市内のあちらこちらにある。金魚池に利用されたため池もあるが、

ため池のまま残ったものもあるのだ。

なかでも私にとってなじみが深いのが、郡山城跡のため池だ。私は生まれも育ちも郡山で

あるから、物心ついた頃から見てきた池だ。幼い頃に家で余ったパンをよく持って行き、カ

メや鯉にやった。最近足を運ぶことは少なくなっているのだが、以前久し振りに訪れた。カ

メや鯉たちは今も元気に暮らしているようだった。水鳥も集まってきて、誰かが放したので

あろう小赤も泳いでいる。もっと小さな、透き通った体をした魚の群れもいる。アメンボが

水面を器用にすーっと動いていく。頭上からカラスが、水を飲みにやってくる。鳩がパンく

ずをついばむ。雀が数羽、浅い所で水浴びをしている。カメが陸に上がってきた。向こうに

鯉の影が見える。鋭い鳴き声。カメラを構えたおじさんが、 「あそこで鵜が鳴いているよ」

と教えてくれた。隣にはつりをする人がいる。

そして私も、そのため池の風景の中にいた。そう、私もまた、水に育まれ、生かされてい

るのだ。

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