【ざぶん文化賞】大海女になる
私の将来の夢は大海女(おおあま)になることだ。海女になろうと思ったきっかけは、小学校
一年生の夏休みに、ばあちゃんと一緒に海へ行ったことだ。ばあちゃんは海女だが、私はそれま
で海女というものに興味を持っていなかった。
その日、私はばあちゃんたちと一緒に船に乗って海に出た。船の上では、海女のおばちゃんた
ちと話したり歌ったりして、はしゃいでいた。やがて目的地に着いて九時になり、海女たちが一
斉に海に飛び込んだ。海を眺めているとき、急に気持ち悪くなった。船が急に止まったからだ。
父ちゃんに「寝とれ」と言われ、すぐに寝た。しばらくして目覚めると、気持ち悪いのも治まっ
ていた。
海を見ると何人もの黒い人がいる。あの中にばあちゃんやおばちゃんたちがいるのだろうかと
思いながら、海をのぞきこんだ。海は透き通ってとてもキレイだった。底がよく見えるから少し
こわかった。ビビりながらもう一度身を乗り出すと、誰か潜っているのが見えた。
最初私は、「サメおらんのかな?」とか「こわくないのかな?」とか思っていた。でも、何回も
何回も深いところに潜って、何回も何回も上がってくる。「苦しいのにがんばってるなあ」と思っ
た。船の反対側に移動すると、おばちゃんがいた。ずっと見ていると、頭を下に足を上げて深い
底へ潜っていった。もうそろそろかなと思っても上がってこない。心配になってのぞくと上がっ
てきた。黒い底から上がってくるおばちゃんを見て、「かっこいい」と思った。海に広がる海女
笛。とてもかっこ良かった。
またしばらくしてのぞきこむと、ばあちゃんがいた。腰にあわびおこしを差して底へ潜って
いった。上がってきてサザエを浮き輪に入れた。本当にかっこ良かった。そして、その日に私の
夢が決まった。絶対に海女になると決めた。
近くの海岸で潜って、サザエを採って友だちにほめられても全然嬉しくなかった。ばあちゃん
たちには叶わないから。ちょっと悔しかった。夏休み毎日海へ行って、少しずつ深い所に行ける
ようになった。でも、納得いかなかった。
六年生の夏休み、船に乗って友だちやいとこと一緒に海へ行った。私がどれだけの量を採って
も、深い所に行っても、ばあちゃんとじいちゃんは友だちのことを褒めていた。とても悔しかっ
た。いつか見返してやると思った。でも、やっぱりばあちゃんたちには叶わない。
いつか、ばあちゃんやおばちゃんたち、どこの海女にも負けない大海女になってみせる。
中村萌と聞いたら「あの人はすごい大海女や」と言われるくらいの大海女になる。


