【文部科学大臣賞】結縁寺の今、むかし
むかしむかし、船尾という村に行基というえらいお坊さんがやって来たそうな。そこは、
広い広い大地の中にできた谷津とよばれる細長い谷間の村さ。奈良という時代に、小さなお
寺をたて、みなの幸せを祈ったそうな。 結縁寺っちゅうお寺だぞ。
船尾の村は、今は、千葉ニュータウンと言って、にぎやかな街になったと。マンションや
大きなショッピングモールのある所でな、たくさんの人が住んでるさ。
だけどよ。結縁寺は、昔のまんま。そこだけ時間が、とまっとる。田んぼに囲まれた、と
ても静かな、静かな、場所さあ。
春は、つくしのぼうやが、にょっきにょっき、顔を出す。さくらや、ふじの花がさき、そ
りゃあ美しい。うぐいすの声に、さそわれ、あたり一面に咲きほこる。
田んぼのいねが青あおとしげる夏は、たくさんの生き物が、歌合戦をする。せみのミーン
ミーン。かえるのケロッケロッ。その声に、まじって、ポーンポーン。花のさく音もひびい
ている。お寺の前の花井戸には、たくさんの蓮の花がさいている。朝になると、静かなお寺
にポーンポーンの音。二千年前の蓮の花、大賀はすが毎朝、咲くんじゃ。大きくふくらんだ
つぼみの中に幸せをぎゅっととじこめ、音とともにとび出す。それはそれは、きれいじゃ。
蓮池は、花井戸ともよばれとる。船尾は今でも、あちらこちらで水がわきでとる。すぐそば
には、わき水が集まった弁天池もある。みなの家の井戸も、おいしい水があふれとるさ。わ
き水のおかげで、アメンボ、タニシ、アオガエルにオニヤンマ。みんな仲良くくらせとるん
じゃ。
まっ赤な秋は、これまた見事じゃ。田んぼのあぜ、寺の道にぎっしり咲くまんじゅしゃげ。
いねかりの終わった田んぼに、しきつめられた赤いじゅうたん。一度見に来てくだされ。
どこからかやってきたカワセミが、弁天池に、ついっと飛んで、魚をとる。あっという間
にくちばしにはさんで木の枝にとまっとる。
冬の田んぼは、土の色。冬の結縁寺は、ゆっくりゆっくり時間が流れる。だげども、モズ
やツグミ、スズメ、鳥がたくさん遊びに来るさ。誰にもじゃまされず、食べにくるんじゃな。
船尾の人が言うとった。わき水の出る所が少しずつ減っとるさ。新しい街のため、道路を
作ると、そばの井戸の水が出んようなったと。悲しいなぁ。だげど、結縁寺のまわりだけは、
今もかわらん。ずっと守ってくれる人たちがいるんじゃよ。昔のまんまのすがたを見たら、
行基さんも喜ぶかのお。
今年も、もうすぐ秋が来る。まんじゅしゃげのじゅうたん。どんなにきれいかの。みなで
歩いて見に来てくだされ。自然あふれる結縁寺におこしくださいませ。


