2015年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  nocolier

【特別賞】海の恵み

「えっ、なになに」

砂地をチョロチョロと右往左往して、素早く走るなにかがいる。その姿をじーっと目で追ってみる。

「カニだー。すごくたくさんいるー」

今まで遭遇したことのない光景だった。

私の住む相馬市松川浦の、干潟観察会での出来事だった。

松川浦も東日本大震災で大きな被害にあった。地盤沈下により、震災前には干潟になっていた場所が

普通の海になってしまったり、私の知る松川浦とは景観も違ってしまった。

この四年間、復旧工事のため今まで楽しめていた海岸へも足を運ぶことができずにいた。今回の干潟

観察会では、日頃工事中で立入禁止場所に入ることができた。

久々に渡る松川大橋の向こう側には、なつかしい青い海が広がり、見慣れた干潟地帯も目の前に現

れた。

どんな生物との出会いが待ち受けているのだろうかと、ウキウキと潤った砂地に足を下ろした。震災

後初めての干潟の感触は、砂が足にまとわりつき、砂地に吸い込まれていきそうだった。

そして足元を見ると、砂に小さな穴が至る所に開いている。カニの巣。この奥にカニが隠れている証

拠である。その近くに目を向けると、アサリ貝を見つけた。そのアサリは、大きく丸々と成長していた。

マテ貝、マガキ、ケフサイソガニ等、次々と久々に色々な海の生物と会うことができた。

ふと顔を上げて辺りを見渡すと、海面が太陽の光に照らされてキラキラしている。海面の奥には、あ

し等の緑色のきれいな植物が広がり、そのずっと遠くに阿武隈山地が連なり、またその上に青く澄んだ

空が大きく広がっている。なんともすがすがしい気分になる。

干潟には、震災前に絶滅の危険があるとされていた貝等の生物が見つかっているそうだ。

大きな津波で干潟の環境も変わり、生物達の生活する場も変化したり、無くなったりしたに違いな

い。でも、あれから四年が経ち、人間が手を差しのべられなかった場所で、生物達が生き生きと生活し

ている。また、新たに干潟となった場所では、新しい生命が生まれているのだ。

「自然の力は、素晴らしい」と感じた出来事だった。夏は何度も打ちよせる波と追いかけっこをして遊

んだり、寒い季節には打ちよせる波の音を聞いてほっとしたりしていた。

海は、私達の生活を支えてくれる資源であり、心をいやしてくれる大切な宝物である。今年の夏は、

海とそこに生活する生物達の力強さを教えてもらった。頑張る力を与えてくれたように感じる。

そして、その大切な海を守っていくのは、私達なのだ。海を守る工夫、心がけを続け、生物達も安心
して生活できる環境を作っていけたらと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です