2011年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  中村 基克

【特別賞】沖泙家の池の水

 

ぼくのばあちゃんの家には、二つの水道があります。一つ目は、ふつうの水道です。二つ目は、ばあちゃんが「池の水」とよんでいる水です。

「池の水」をさわってみたら、ぼくが今までにさわったことのある水の中で、一番冷たかったです。飲ん でみると冷たくてあまくて、あとからちょっとだけ苦くなるけど、すごくおいしかったです。その後で水 道の水を飲んでみると、ちょっとくさくてまずかったです。

「池の水」は、ばあちゃんの話では、ぼくのひいじいちゃんがほった井戸の水だそうです。ばあちゃんが、 沖泙の家によめにきたころは、家に水がなかったそうです。それで、ばあちゃんは近くのわき水を毎日く みに行きました。すごく、たいへんだったそうです。

 

それで、今から五十年くらい前にぼくのひいじいちゃんが、家の中に井戸をほることにしました。井戸

をほる人にたのんで、手作業でほりました。何日も何日もほっていきました。それでやっと家に水が出る ようになりました。

 

ばあちゃんは、

「そのころそんなことは、沖泙の家ぐらいしかしてなかったよ」

と、言っていました。ぼくは、ひいじいちゃんはすごい人だなあと思いました。そして、ばあちゃんの仕 事は楽になって、とても助かったんだろうなあと思いました。

 

そのずっと後に、ぼくのお父さんが生まれました。ぼくのお父さんは、自分の家の「池の水」が大好き

です。夏は冷たくて、冬はあったかいからです。

 

四年前、能登に大きな地しんがありました。そのときばあちゃんの家はどこもこわれなかったけど、井

戸の中がくずれて、水が出なくなっていました。それをばあちゃんが、輪島の井戸をほる人にたのんで直 してもらいました。それでちゃんと「池の水」がつかえるようになりました。

 

ひいじいちゃんが作った沖泙の「池の水」は、こうやって守られてきたんだなあと思いました。ぼくは、ばあちゃんの家にいっしょに住んでいないけど、おじちゃんやお父さんを育てた「池の水」を、ぼくも守 りたいと思いました。

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