【奨励賞】流れにまかせてどこへ行く
ふと、思うのは、いつもパレットにこびりついた様々な個性を水で落とす時。 「そういえば、絵の具って、水汚染させるのだろうか」
私の家は川の下流で、しかも海に近い場所に住んでいます。登校する時は橋を渡り、車に気を付けな
がら、川を意味なくながめて歩く。思い出す事といえば、いつの日か川に落ち、何ともいえぬニオイの泥のかたまりに足をつっこみ……いや、つっこんだ事しか覚えていませんでした。そういえば、ヘドロだぁとさわいでいた記憶も……。
私は今こそは筋金入りのインドア派となり、外へ出ることも少なくなりました。だから、登校する時
だけが、海や川をじっくりながめる時なんですよ。
ただ一度、今までにインドアの私が、山でキャンプを、地方のPTA主催(だった気がする)で行った
事があります。あまり、乗り気ではなかった私ですが、なんせ初めてなもので、ある景色を見てからは、今も行きたい(泊まり無しで)と思うようになったのです。 「これは同じ世界なのか」
川で魚をとろうという事で仕かけを作りいざ出陣。その川は何と別の空間への入り口……なんてことは
無いのですが私が見たのは、これでもか、と澄みきった川。下流に居た私には、とうてい普段はお目にかかれないような川の水。水の中に手を入れてみる。ハッキリと川の流れにそったシワの入った手が見えています。下流では絶対と断言できるくらいできない事です。逆に上流の方に住んでいる人は、下流を見たらどう思うんでしょうね。……いや、流石に下りた事ありますよね。うん。
いつかの夢は絵描きになる事。キレイな、人の心にひびくような絵を描いてやるんだ、と野望を持つ私
は、裏を返せば、絵以外取り柄のない人。最近はもっと真剣に絵に考え始めています。某日、絵の展覧
会を見に行った時、目に止まった黒い額縁。そこには森の中の一シーンが描かれていました。自然か……
もう一度あの川を見たい。自然をテーマにした絵を見るにつれ、登校するとき、ながめたあの黒いフィルタのかかった川を見るにつれ、思うのです。
私は川の近くに住んでいるのに、何故見ることができない?簡単です。私達が汚しているからでしょ
う。その川に飛びかう鳥達。
美しい絵を描く絵描きになりたい。あの澄んだ川を、いつの日か本物の感動を届ける絵描きに。あの川
じゃなくてもいい。絵を志す者、紙に描く美しい川をすべての川に事実として、はんえいさせようじゃありませんか。
登校する時にいつも見える川、上流のように戻すには手遅れかもしれない。でも悪化は防げる。美しい
絵と美しい環境。最高じゃないですか。 絵の具を落とすたび思うのは。


