2006年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  平田 麻里子

【奨励賞】みんなの力

おらはのらねこの、のん。ひなたぼっこするときにはよく川へ行くんだ。今日も川べりのお気に入りの

場所にごろんとねころがったら、背中になにかが当たったんだ。なんだろうってふりむくと、あきかんが落ちていた。あきかんのあなをのぞきこむと暗い中になにかが動いたような気がした。でも気のせいだと思って、前足で思いっきりけとばしてやろうとしたらそこから声が聞こえたんだ。

「やめて。けとばさないで」

おらはびっくりしてもう一度あきかんの中をよおく見てみると、おらの鼻先に小さい魚が飛び出て話し

はじめた。

「けとばすのをやめてくれてありがとう。きみとちょっと話したかったんだ」

おらはいっしゅんおいしそうなやつだと思ったが、話をする魚を見るのははじめてなので、食べるのは

やめておくことにした。

「ぼくはスーっていうんだ。めだかのみかけだけど、水の妖精なんだ」

そっか、さかなじゃないんだ、とおなかがすいていたおらはちょっとがっかりした。

「それで水の妖精がどうしてこんなところにいるんだい」

「人間がボクをあきかんで水といっしょに川からすくったんだ。そしてそのまま川べりに捨てていっちゃったんだ」

「ゴミだと思われたんだな。だから捨てられただけの話だろう」

「そりゃあゴミはどこかには捨てるものだけど、どこにでも捨てればいいってもんでもないでしょ。こうやってゴミが最初にここに捨てられてから、だんだんゴミがふえていって、それでみんなここにゴミを捨ててもいいと思うようになっちゃったんだ」

「そっか。そういえば最近このあたりも汚くなってきたな」

「もしこのままゴミがもっと増えていったら、きみのお気に入りのひなたぼっこの場所もなくなっちゃうよ」

と言ってスーは、川のなかへぽちゃんととびこんで帰っていってしまった。

おらは、スーに教えてもらうまでそんなこと考えたこともなかった。これはたいへんなことだ。のんは、ねどこにもどってからもひとばんじゅうねむらずにどうしたらいいか考えた。 「よし、みんなに知らせて川をきれいにしよう」

次の日の朝、のんは友達ののらねこにスーの話をしてみた。まず十匹ののらねこが集まって、川のゴミ

を拾おうという話になった。一日ゴミを拾ってみたが、川はなかなか思ったようにきれいにはならなかった。その次の朝にはまたゴミが捨てられていてもとにもどってしまった。十匹ののらねこは、百匹ののらねこにスーの話をしてみた。みんなで一日ゴミを拾ったら少し川はきれいになった。百匹ののらねこは、よろこんで千匹ののらねこにスーの話をしてみた。千匹ののらねこで力を合わせてゴミ拾いをしてみたら、川はとうとうすっかりきれいになった。

「こんなにきれいになるなんて最初は信じられなかったよ。一人じゃなくて、みんなでやったからできたんだね」

とのんの友達の、ののは言った。 「すごいね」

とおらはつぶやいた。

夕日が川面にうつって、とてもとてもきれいだった。

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