【特別賞】山の水
2022年10月7日
僕の家には、市の上水道とは別に「山の水」と、婆ちゃんが呼んでいる蛇口がある。
そこからは井戸水ではなく、本当に山から湧き出た水が出てくる。少し濁ったその水を婆ちゃんは、 洗濯や庭木にまいている。
「そんな汚れた水使わんでも、水道の水使えばいいがんに」って、僕はいつも思っていた。
父さんは、金魚の水そうの水を換える時に、その山の水を使う。水そうに入れた水は最初は少し濁っ ているが、だんだん清んでくる。
まだ小学生だった僕は、「面倒くさいなあ。水道の水の方が早いのに」って思っていた。
ある日、金魚に水そうの水の入換えを頼まれた僕は、水道の水を直接水そうに入れてしまった。 「やっぱり、この方が早いし、きれいやわ」と、僕は少し自慢げに思った。
しばらくたって水そうを見ると金魚が何匹か、お腹を上にして苦しんでいた。慌てて父さんがバケツ に山の水を汲んできて、金魚を水そうから移した。でも大きな金魚が二匹も死んでしまった。
その時、父さんが水道水は元々は川の水で、その水を僕たちが飲んでも大丈夫なようにカルキで消 毒・殺菌しているんだって事と、そのカルキを抜かないと金魚は死んでしまうことを教えてくれた。
僕はそれまで水道水が川の水だって事も知らなかったし、カルキで消毒と殺菌をしている事によっ て、僕たちの口の中に入れても大丈夫なようにしていることも知らなかった。そう言われればどこかの 工場で水を作っているわけでもないし、この川の水を僕たちが飲めるように、いろいろな工程があるん だろうなあと感じるとともに、なんか山の水がとても大切な水のような気がした。今でも金魚の水そうの水を換えるたびに、ありがたい水なんだなって僕は思っている。
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