2007年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  白川 郁栄

【奨励賞】きっと僕らに罪はない

僕はシュモクザメ。仲間と一緒に暮らしていた。僕の暮らす海には、僕の大好物のイワシもいたし、お

腹をすかせることもなく平和に生きていた。何より、僕らより恐ろしい生き物なんていないと思っていた。

…そう、あの日までは…。

ある日の朝、何だか暖流が流れてきたような気がした。仲間たちもそれに気づき、その暖流が流れて

来る方向へと僕らは泳いで行った。たどりついた先は、陸に近い少しにごった海だった。ふと、水面を見上げると、そこには二本足で泳ぐ、肌色の生き物がいる。

「人間だ」

仲間の一匹が叫んだ。僕らはその生き物に興味を持ち、近づいていった。そう、うかつにも頭を出して

…。その時、 「きゃあサメだ」

という悲鳴が聞こえた。そして人間たちは陸へと逃げていく。しばらくして、網を持った人間たちが細長い箱に乗ってやって来た。人間たちはその網を…あ僕の仲間に向かって投げつけた仲間は暴れ

ていた。けど、動けば動くほど苦しくなるその網。そして人間は、その仲間に太い針を刺す。

「やめろー逃げるんだ」

僕は叫ぶ。でも、もう手遅れ…。仲間の体からは血が流れ出していた。僕は目の前が真っ暗になった。

でも、そうしている暇はない。人間たちは追ってくる。どんどん仲間たちは殺されていった。僕は、なんとかその場から逃げることができた。

夕方になった。仲間はほとんどいなくなって、残ったのはたった三、四匹。その日、僕らは知った。僕

らより恐ろしい生き物がいることを…。けど、どうしてなの?僕らはただ暖かい海へ行っただけ。人間 

を襲う気なんてこれっぽっちもなかった。…でも、ああそうか。あの海は汚れていた。それは人間の心の色なのかもしれない。海が暖かくなったのも、仲間が消えていくのも、海が汚れていくのも、もしかしたら、全て人間のせいなのかもしれない。そうだ、きっと…。 きっと僕らに罪はない。

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