【準ざぶん大賞】緑の地平線
それはまだ、地球上に空と岩しかなかった頃のお話。
その頃、地球は生まれたばかりで、ごつごつとしたいかつい岩肌と、どこまでも広がる空だけが世界の全てだった。空は、地球が回るごとその表情を変えた。けれど、大地は、だんまりを決めこんでは時折狂ったように、火を吹くだけだった。
そんなことが続いたある日、ぱったりと大地が暴れるのをやめた。空はあいかわらずめまぐるしくその色を変えたが、大地は死んだように沈黙を守っていた。そしてある時、空はとうとう、とうとう泣き出してしまったのだ。大粒の涙を、ポロポロポロポロこぼして…。生まれた時も今までも、いつも目の前にいたのは大地だった。その大地が今は死んだように眠っている。生まれた時から二人きりだったのに、一人になることなどなかったのに…。空は生まれて初めて、「孤独」というものを知ったのだ。
三日三晩泣き通し、流れた涙は川になり、湖になり、やがて大きな大きな「海」ができた。空がふと気がつくと、目の前には自分そっくりな、それでいてどこかゆらいだ顔。「それ」は空が笑えば笑い、悲しめば悲しみ、驚けば、そのまんま驚いた顔になり、空が手をのばせば、向こうも同じように手をのばした。
「あぁ、もう一人じゃないんだ」
お互いの手がふれ合った所から、お月さまがほっこり、顔を出した。
世界は満ちたりて輝いていた。
気がつけば、太陽はほとんど沈みかけていて、太陽が沈むその一瞬に、緑の線が走った気がした。やがて空は闇にその身を染めて、静かに静かに海と溶けあった。空には星が散り、そして、海もそれを映して輝いた。
迷信の一つに、太陽が沈む瞬間、一瞬だけ水平線が緑に染まって、それを見られると幸せが訪れるという話がある。
その時空は、確かに幸せだったのだ。
「幸せ」はいつだってその人のかたわらに。
気づけるかどうかはあなたしだい…。


