2003年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  表 供美

【ざぶん文化賞】波に乗って空を飛んだ僕

「来たぞ!」僕はさけびました。臨海学園の海の中で、大きな波を待っていたのです。ここは波が高くて、山のようにも思える波が、今近づいてきています。僕は波を背にして泳ぎだしました。すると、あっという間に波の上へ押し上げられました。何度も何度もやっていると、突然体が空中に放りだされて、ふわっと浮いたような気がしました。後からどう考えてみても、あれは波のてっぺんを飛んでいたのです。前から見た人がいたら、ぼくはスーパーマンにまちがえられていたことでしょう。小さいときにあこがれていた、ホーバークラフトそっくりに、僕は海の上で空を飛んだのです。
  だけど波に乗れるのはなぜでしょう?そもそも波って何でしょう?泳ぎながらぼくの頭は忙しかった。てがかりその一。波は前後に僕をゆさぶるだけじゃない。上下にも動く。ここが波のすてきなところ。
  てがかり二。テレビで見たけど、一度できた波は、海底の深さが変わらない限りはどこまでも進む。だけど、急に浅くなるところだと波の引く力が急に強くなって、波がくずれてしまうという。海岸に一箇所だけでもいいか
ら、同じ深さの溝を作ってくれないかな。そしたらすごい波が岸まで続くことでしょう。
  てがかり三。「水と空気」の授業で厚井先生が言っていたけど、水面では水の分子同士がしっかり手をつなぎあっている。だから海はこんなに動いているのにバサバサにならない。波は砕け散ってもすぐにまたうねりになる。何だか抱きかかえられているみたいだ。
  てがかり四。運動会の組体操で、ウエーブといって波を全員でつくったことがある。五年生全員が一定の方向に一定の時間づつずらせて手を動かすことで、手が大きな波のうねりになった。あれは感動ものだった。波はリズムだともいえる。
  てがかり五。おじいちゃんは、波は風のせいで起きるって言ってた。風は空の力だとも。布のしわをのばそうとすると、しわは手に押されてまるで波のように進む。ということは、波は海のしわだ。何かに押されるから、波ができる。前からも後からも押されてふくれあがったエネルギーのかたまりが波なんじゃないか。そして、空からもらったこのエネルギーが地球の生命を生み出してきたんじゃないかと思いました。もしそうなら波は生き物たちみんなのお母さんです。
  またすごく高い波がやってきました。僕はもう一度、波に乗りました。体が浮くと、海のエネルギーのかたまりから飛び出して、鳥になったような気がしました。ちょうど、太古の海の波にもまれながら、シーラカンスがものすごい力で陸にうち上げられたのと同じように。やっぱり海は最高だ。いつまでも力強く波うっていてほしい、僕は空を飛びながら、心からそう思いました。

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