2009年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  藤生 真梨

【特別賞】恵み

神様は涙を流すのでしょうか。

雨が降る日。窓をつたって流れる雨はまるで天からの涙のよう。そんな様子を見ていると、ふと幼いこ

ろのあの言葉を思い出すのです。 「雨は神様の涙なのよ」

私が幼いころ、保育園で先生に言われた言葉。この言葉で、雨の日の灰色な世界が美しく彩られてい

きました。

どんよりと青空をおおいかくす雲。道にはポツポツと水玉模様が描かれます。人々の丸い傘が開く様

子は、花が開いていくようです。ザーという雨音が耳に入ってくると、私は思うのです。『何か悲しいことがあったのかな』と。

梅雨の季節は憂鬱です。しめった、ジメジメとした空気は、雰囲気までしめらせてしまいます。それ

は、神様の気持ちを表しているようです。しかし、雨水にぬれた草木は美しく、私を家の外へと誘いま

す。健気に咲く花を見ると、暗い気持ちの中に光を見つけたような安心感があり、私を落ち着かせてく

れるのです。

突然の青空からの雨。サラサラと流れるような不思議な雨。『狐の嫁入り』という美しい名前は、おめ

でたいことのようです。何かうれしいことがあったのでしょうか。嬉し涙を流しているのかもしれません。

人をどんよりとした気持ちにさせることも多い雨。でも、少し視点を変えてみると、毎日の生活に

ちょっとした彩りを加えてくれるのです。

『恵みの雨』という言葉があります。農作物を育てるために必要不可欠な水。その水に雨水が使われています。草木にうるおいを与えるのも雨です。身の周りを流れる川も、もとを辿れば雨にたどり着くでしょう。

雨を神様の涙だとすると、神様は泣くことで人々の生活、自然をうるおしているということになりま

す。

私達も同じなのでしょうか。

美しい涙の陰には、たくさんの思いが交差しています。悲しい気持ち。悔しさやなんともいえない曇っ

た気持ち。逆に、嬉しさや感動といった幸せなものもあります。

どんなに曇った空でも、激しい雨が降っても、すべてを流してくれるかのように美しい青空が待ってい

ます。そして、以前よりも輝く光が現れるのです。 そんなように、私もこの心に雨を降らせたい。

どんな雨でも心をうるおしてくれるはずなのです。待ち受ける晴れた空。苦しい時が長くても、終わり

がないようでも、涙は私の心に恵みを与え、一歩進む勇気を生み出してくれます。

神様の涙と私達の涙。美しい涙を流せるような美しい心をいつまでも、その『雨』で育てていきたいと

思うのです。

次はいつ雨が降るのでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です