【特別賞】うみねこ
昔々のお話です。今はうみねこは鳥です。けれど、昔はうみねこといえば、猫だったのです。今からこ
のお話に出てくるうみねこは、猫です。さて、うみ猫は、顔が猫で体が魚というものです。うみ猫にも、進化の進んでいるものと、進んでいないものがあって、えら呼吸だったり、肺呼吸だったり、尾びれだったり、後ろ足だったり、もう、おもしろいったらないです。ランダムで、肺呼吸のうみ猫から、えら呼吸が産まれたりします。
気持ち悪いと思われるかもしれないけれど、これがなかなかかわいくて、その上、人間語が分かり、少
ししゃべれるものですから、うみ猫を飼いたいという人も多いんですよ。ただそれが、とてもとても手がかかり、お金のかかるものでして。金持ちしか飼えない。でも海に行けばそこらへんに肺呼吸のうみ猫が日光浴しているという、なんともふしぎなものでして。
私も昔は飼っていました。肺呼吸で、前足、後足の、ほぼ猫に近いうみ猫を。しかしこれがうるさい
もので、二十五メートルプール以上の海に近い環境にしてやっているのに、「海はどこニャー。帰りたいニャー。ニャーニャー」
オスメス二匹飼っていたので、二倍にうるさいんです。それにオスメスですから、えら呼吸の、ひれの
やつが産まれてしまいまして、それはそれでかわいいのですが、費用がもうカエルのたまご形式に増えて…。結きょくは逃げ出して、一匹もいなくなってしまったのです。いろいろな面から見て、海に行って人になついているうみ猫をなでるのでいいと思います。さてさて、ここまでくると、陸上の猫が先か、うみ猫が先か、鳥のうみねこが先かということになります。では、この三つの生き物の進化の伝説を語ろうと思います。まず初めに、陸上猫がいました。ある時、航海に二十匹ほどの猫がつれていかれました。その船が不幸にも、転ぷくしてしまったのです。ところがところが、さすがは猫です。人は助からなかったのに、しぶとい猫は無人島に泳ぎつきました。
ところが、泳いだ時の感じを、猫は忘れられなくなってしまいました。故郷も忘れられず、泳ごう、泳
いで帰ろう、という意見で二十匹が一致しました。そして時はすぎ、代が替わっても、帰るという気力は変わらず、一生けん命な猫たちを見た神様が、猫たちに魚の体をくださいました。うみ猫の誕生です。
魚の体によって猫たちは、先祖の故郷にたどりつきました。日本です。ところで、そのと中の島などに
住みついたうみ猫もいます。べつの国のうみ猫たちです。そして、その日本にたどりついたうみ猫の子孫が、これまたべつの国に行ってみたいと思うようになりました。とても強く思ったので、また神様が、鳥のつばさをくださいました。
猫たちは、いろいろな国を代替わりしながらも旅をしていくうちに、うみ猫はしだいに姿が見られな
くなっていきました。鳥のうみねこは進化し、後ろ足、体、そして最後は顔まで鳥になってしまいました。
旅をした国々の中で、心地良かったり、よいと思った所を、だんだんみなのうみねこが旅をするようになりました。しかし、飛ぶのも限界があるので、日本の近海にとどまりました。
そしてニャーという鳴き声が、うみ猫のなごりを物語っています。ただ、猫とちがう所、うみ猫と同じ
所があります。それは家族的な縄張りをつくるという所です。
私は今でもうみ猫が生きていたら、と思います。


