2007年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  千葉 修平

【奨励賞】ぼくとミッ君あいつに出会う

カッパなんているはずがない。ぼくはこの歳になるまで、いるなんて思ってなかった。「自然の水事件」

がおきたのは、つい先週のことだった。ぼくは塾のおともにペットボトルを持って行くのが好きだった。

それも、ミネラルウォーターだ。その日もペットボトルを持って塾へ向かって行った。川辺にさしかかるところで親友のミッ君が後ろからやって来た。ぼくは後ろを向いて、ミッ君に「おはよう」と声をかけて、前を向いたんだ。そしたら、カゴに入っていたはずのペットボトルがなかったんだ。ミッ君とぼくは、川辺を探した。なのにないんだ。この事件が一回だったら、あいつに会うなんてことはなかったと思っている。

その事件から一週間がたった今日、ぼくとミッ君は犯人をつかまえる作戦を立てたんだ。川辺にペット

ボトルを置いて、それをとろうとした人をぼく達二人で取りおさえるんだ。ぼく達は野球バットとあみ

を片手に川辺へ向かった。足がビクビクしていても。川辺でぼく達はいつでも出て行ける準備をし、交代で見張りをしていた。今はぼくの番で、ミッ君はどこかふらついている。 「警部、アンパンを買って来たよ」

ミッ君がいきなり後ろから声をかけて来た。今のでぼくは、三センチは飛び上がり十年は寿命が縮ん

だと思う。

「ミッ君、なんかかんちがいしてない?」

ぼくは、ミッ君にはきいても、意味のないことを言っていた。ミッ君が口を開きかけたとき、草をふむ

音がした。ぼく達はペットボトルに視線を戻す。まだ、ペットボトルは置いてある。足音は近づいてくる。

そして、ペットボトルに手のようなものがのびた。よく見ると手ではないようなものが。

ミッ君がとなりでさけんだ。

「今だ!」

その声と同時に、ぼくはあみを上からいきおいよくおろした。 「痛てぇなぁ、何すんだ!」

おじさんのような声が聞こえた。ぼく達は反射的に

「すみません」

と頭を下げて言っていた。おじさんはというと聞こうともせずに、 「どうすんだよ皿われたら。これ高えんだぞ。一万は最低でもすんだぞ」

と、ぶつぶつ言っている。ぼく達は、皿とはなんなのかと不思議に思い、頭をミッ君と一緒におそるおそる上げて、おじさんを見た。おじさんは、頭には皿、背中にはコウラ、はだは緑色のあいつだったのだ。

カッパだ。ミッ君とぼくは驚きすぎて声もあがらない。でも、言わなければいけないことを、勇気を出して言ってみた。

「あなたがペットボトルをぬすんだ犯人ですか?あと、もしかしてカッパですか?」

その答えは、すぐに帰って来た。

「まあな、ちょっくらペットボトルとやらをぬすませてもらった。あとよぉ、俺はカッパだけどよぉ、さんぐらい付けてくれよ。カッパさんとよぉ。それに、あんまかたくなんなくていいぞ。俺、心広いから」

このカッパ、いや、カッパさんは何者だ。第一、人の物を「ちょっくらぬすんだ」とか言って、許せな

い。ぼくはどなっていた。

「カッパさん何でペットボトルぬすむんだよ」

カッパさんはうんざりして言い返して来た。

「そりゃおめえ、お前達人間が川をうばったからだろう?」

「川をうばったって」

ミッ君はやっと驚きから解放されたらしい。心臓は止まっていなかった。よかった。

「そうさ、うばったのにかわりねぇよ。汚すのはよぉ。俺達は水は水でもきれいな水がねぇと生きていけねぇ。なのに、人間が油を流したんで汚れちまった。おかげで、こちとら仲間が減っちまったんだよ」

カッパさんは、ぼくのミネラルウォーターをグビッと気持ちよさそうに飲んでいる。無許可で。でも、

しかたないのかもしれない。原因がぼく達なのなら。そんなことを考えている間に、カッパさんは一本飲みほしていた。

「このペットボトルは、俺がリサイクルに出しておくぞ。僕はこう見えて、エコ主義者なんだよなぁ。

やっぱこれ以上川汚れんのいやだしな。お前ら、今度は水筒に入れてこいよ。さらば!」

一人でしゃべりまくり、すっごく変でちょっぴりかっこいいカッパさんは、川の中に帰って行った。

ぼくは昨日から、カッパの存在を信じている。あんなことがあったのだから信じないはずがない。

ミッ君は、

「カッパはイリオモテヤマネコのようなめずらしい存在で、ただあまり見ないだけだ」

と熱心に話してくれた。

ぼく達はこれから、カッパさんの所に行って来る。カッパさんの仲間も飲めるように、たくさんのミネ

ラルウォーターを水筒に入れて。

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