2012年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  石田 匠

【特別賞】自然を守るということ

 

三月十一日、日本人にとってわすれられない一日だった。あの日あの時、わたしは学校にいた。ちょう

ど六時間目の最中。もうすぐ終わって帰る準備をするところだった。下から教頭先生があわててかけ上

がってきて、

「地震があってこっちの方にも津波がくるそうだ。海岸に近寄らないように。気をつけて帰ること」

といいにきた。海岸近くのわたしの家は、母が迎えにくるまで学校で待つことになった。

 

放課後の学校で見たテレビの映像は、まるで映画のようで、本当に今起こっているのかわからなかった。

そのあとのニュースを聞くたびに、それがどんなにひどい災害か思い知らされた。その時、わたしは自然のこわさを実感した。

 

今年の夏。ぎらぎらと晴れた日の朝のこと。いつものように校長先生とラジオ体操から帰ってきた時、

浜の方からにぎやかな声が聞こえた。行ってみると、大浜上の自治会長と渚を守る会の人が、

「かめがうまれたよ。今日の夕方、かめの放流をするからね」 と話してくれた。

 

その日の夕方、走って浜へいった。かめを見てみると、小さな手足をばたばたさせて、元気いっぱいの

様子だ。わたしも、一匹のかめをつかんだ。小さいのにとっても力がある。あんな大きな海に一人で生きていくんだと思うと、ただがんばれの気持ちでいっぱいになる。わたしには、とてもまねができない。砂浜におろすと、海にむかって必死に歩き出す。ときどき波がきて、ひっくり返る。また、立ちあがる。また、ひっくり返る。波がきても決してまけない。まわりのかめたちも一生けんめいだ。およそ七十ぴきくらい、いるだろうか。一ぴきまた一ぴき、波の中にきえてゆく。

 

渚を守る会の人たちは、「いつでもかめが帰ってくる浜になるように」と活動しているそうだ。かめが

来る浜はとても大切な浜だということだ。

 

東日本大震災や台風などを思うと、わたしは自然のこわさばかり考えていた。でも、あの津波を生み

出した海には、こんなかめのような命が何千何万と生きていて、人間と同じように大切な命が生きてい

て、本当にそれを支えているのが自然なんだなあと思う。

 

わたしの家の前の海も春夏秋冬、いろいろな顔がある。海の音はわたしのふるさとの音でもある。こわ

いだけでなく、優しくもある海だ。

 

福島の子どもたちと話をした。「家に帰りたい」といっていた。ふるさとが一番だそうだ。わたしは、

ふるさとの自然とともに生き、ふるさとの自然を守りたいと思う。あの小さなカメさんたちのためにも。

「また、帰ってきてね」そっとわたしは、つぶやいた。

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