【特別賞】自然を守るということ
三月十一日、日本人にとってわすれられない一日だった。あの日あの時、わたしは学校にいた。ちょう
ど六時間目の最中。もうすぐ終わって帰る準備をするところだった。下から教頭先生があわててかけ上
がってきて、
「地震があってこっちの方にも津波がくるそうだ。海岸に近寄らないように。気をつけて帰ること」
といいにきた。海岸近くのわたしの家は、母が迎えにくるまで学校で待つことになった。
放課後の学校で見たテレビの映像は、まるで映画のようで、本当に今起こっているのかわからなかった。
そのあとのニュースを聞くたびに、それがどんなにひどい災害か思い知らされた。その時、わたしは自然のこわさを実感した。
今年の夏。ぎらぎらと晴れた日の朝のこと。いつものように校長先生とラジオ体操から帰ってきた時、
浜の方からにぎやかな声が聞こえた。行ってみると、大浜上の自治会長と渚を守る会の人が、
「かめがうまれたよ。今日の夕方、かめの放流をするからね」 と話してくれた。
その日の夕方、走って浜へいった。かめを見てみると、小さな手足をばたばたさせて、元気いっぱいの
様子だ。わたしも、一匹のかめをつかんだ。小さいのにとっても力がある。あんな大きな海に一人で生きていくんだと思うと、ただがんばれの気持ちでいっぱいになる。わたしには、とてもまねができない。砂浜におろすと、海にむかって必死に歩き出す。ときどき波がきて、ひっくり返る。また、立ちあがる。また、ひっくり返る。波がきても決してまけない。まわりのかめたちも一生けんめいだ。およそ七十ぴきくらい、いるだろうか。一ぴきまた一ぴき、波の中にきえてゆく。
渚を守る会の人たちは、「いつでもかめが帰ってくる浜になるように」と活動しているそうだ。かめが
来る浜はとても大切な浜だということだ。
東日本大震災や台風などを思うと、わたしは自然のこわさばかり考えていた。でも、あの津波を生み
出した海には、こんなかめのような命が何千何万と生きていて、人間と同じように大切な命が生きてい
て、本当にそれを支えているのが自然なんだなあと思う。
わたしの家の前の海も春夏秋冬、いろいろな顔がある。海の音はわたしのふるさとの音でもある。こわ
いだけでなく、優しくもある海だ。
福島の子どもたちと話をした。「家に帰りたい」といっていた。ふるさとが一番だそうだ。わたしは、
ふるさとの自然とともに生き、ふるさとの自然を守りたいと思う。あの小さなカメさんたちのためにも。
「また、帰ってきてね」そっとわたしは、つぶやいた。


