2006年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  森岡希世子

【奨励賞】異常気象の活用

夏休み、僕は、家族といっしょに、祖母の待つ千葉県いずみ市に、車で向かっていました。

「ゴロッピカッ」

どんよりとした空が、急に真っ黒になり、雷鳴、そしてどしゃ降りになりました。

「お母さん、車をどこかに止めようよ。全く前が見えないじゃない」

「大丈夫よ。ゆっくり、ゆっくり走るから」

我が家では、車は母しか運転しません。助手席の父が急に大声を出しました。 「おい、ひょうが降って来たよ。コツンコツンあたるだろう」

八月のひょう。僕は、初めて見ました。氷砂糖くらいの大きさのものまで、ボンネットにあたりました。

「車に穴があかないかしら。いや、それよりお母さん、この雨の降り方異常よ」 妹がそばで震え出しました。

僕は、今まで何回も大雨を見て来ました。しかし、前のガラスが真っ白になるほどの大雨は初めてでし

た。

「お母さん足元がぬれて来たよ」

「それは大変だ。床上浸水ってことだよ」

父が、半分冗談で言いながら、興奮していました。

「止まろう。これはだめだ。雨さえ降らなければよかったのに。せっかくのお盆なのに」

僕は、この時ふと変なことを考え始めました。

豪雨を止める研究は、もちろん大切だと思います。でも、雨水、豪雨を利用する研究こそ、二十一世紀

の主要な科学になると考えていたのです。僕は、雨水や豪雨の力で、人間や自然にかかわる問題を解決

できると考えます。雨水は一番簡単な活用法で、飲料水としてなら、最長二ヶ月ほどもつというデータがあります。

では、豪雨はどうでしょう。僕は、『もったいない』感覚を持ち、豪雨も利用すれば良いと考えます。

たとえば雨水で走る自動車の開発や、豪雨による豪雨発電。雪との融合による冷房・暖房への利用。川

の水をためるのではなく、雨水だけをためる雨水ダム。豪雨による荒地緑化及び都市部の緑化。道路周

辺を常に湿らせ、道路温度を下げるための豪雨の利用。山崩れや伐採により荒れた森に保水力を補充す

る豪雨の活用。さらに都市部のクール・アイランド化の推進に、豪雨を霧状に噴霧したミストの装置開

発。豪雨による農業用水、災害時の緊急備蓄としての豪雨の利用などです。

もう、考えがどんどんあふれ、頭が床上浸水になりました。ああ、もったいない。豪雨という可能性の

ある資源を捨てるなんて。

お盆帰りの豪雨とひょうの中、僕は、人間が、あらゆる種類の水の恩恵にあずかれる二十一世紀を考

えました。そして、雨がやむ頃、僕たちは目的地に着いたのでした。

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