【奨励賞】クリーン・リバー
「さりちゃん、はいどうぞ」
とご近所の嶋さんが毎年取れたてのぼく達を、さりちゃんのお家に持っていかれるんだ。嶋
さんは毎年七月になると、近くの犀川でぼく達を釣って、さりちゃんの大好物だと知っている
から、必ず持って行くんだ。
ぼく達がさりちゃんのお家に行く時は、そろそろ暑い夏が近づいていると、つくづく感じ
るんだ。
さっそく、ぼく達は体全体に塩をぬられ、塩焼きにされるんだ。それを待っているさりちゃ
んは、本当に待てないと言った顔で、焼き上がりを今か今かとのぞいて見ているんだ。
そして、出来上がり。
もうその時のさりちゃんの目は、ダイヤモンドのように輝いて、ガブッとかむと、
「何とも言えないこのおいしさ。最高においしい」 と、あっという間に食べちゃうんだよ。
でも、今回はいつもと少し違っていたんだ。
ガサッ、ゴソッ。あれれっ。袋の中に何か動いているぞ。
それは、焼く準備中にぼくだけ動いちゃったんだ。さりちゃんはその事にすぐ気付いて、
どうやらママに相談をしているようで、声が聞こえたんだ。
「ねぇ、ママ。さりちゃんはあゆが大好きだけど、この動いているあゆは川に返してあげたい
の」
「そうね。だって動いていてとても元気なんだもの。そうしましょう」 「やった。ありがとう」
さっそく次の朝、ぼくは犀川という川の上流に連れて行かれたんだ。 ところが、さりちゃんは困った顔になったんだ。
「こんな所にこのあゆは放せない」
次に、困った顔から怒った顔になっちゃった。
さりちゃんは、川に行ってそっとぼくを放そうと回りを見渡したら、ペットボトルや紙皿
などのゴミがあそこにも、ここにもたくさん、たくさん。
ぼくたちはいつも、
「ちょっと、そこの今ここで遊んでいた人間さん、自分で出したゴミぐらい持ち帰ってよ。こ
こはぼく達も一生懸命生きている大切な川なんだ」 そう心の中で叫んでいます。
あれっ。さりちゃんはママと一緒にゴミを一つずつ拾い始めてるぞ。しばらくするとそこに
はいつの間にか大きなゴミの山が出来上っていたんだ。
なぜこんなによごれているのだろう。一人ひとりがほんの少し気を付けて持って帰ってくれ
れば、きれいな川にすることが出来るのに。心のない一部の人間が、ついつい自分さえよけれ
ばと思い、よごしてしまうんだね。
でも、ぼく達は希望を捨てない。いつか昔のような住みやすい川に戻る事を。来年もさりちゃ
んの家に行かなくてはならないから。
その思いを胸に、ぼくはさりちゃんの手から離れ、また泳いで行きました。
また、来年も会おうね。
「本当に助けてくれてありがとう」


