【奨励賞】海と生きる
「時間だ、起きろ」
父のこの声で、僕はいつも目が覚める。
海の町、戸井。夏になるとほとんどの家が朝早くから海に出て、昆布をとっている。
僕の家も漁師なので、毎朝昆布をとりに海に出ている。僕自身も、父の手伝いで小五の時から一緒に船に乗っている。最初は船に酔ったり、何をしていいのかわからなかったりと、いろいろとたいへんだった。今では酔うことも少なくなったし、仕事にもなれて、前よりも楽になった。
昆布とりは朝早くから夜遅くまでかかる。一日の約八時間以上が昆布。夏休みには、ほとんど毎日が昆布なので、遊ぶ暇さえない。
僕は、正直に言えば昆布とりは好きではない。でも僕ががんばれば、父の手伝いになるのなら、精一杯がんばりたい。僕の父は、春は出稼ぎに出るので会えない。夏には昆布、秋には出稼ぎ、冬にはタコ獲り。春、秋と出稼ぎに行ってしまうので、父は夏と冬しかいない。
一昨年には、弟が生まれた。今まで四人家族だったので、父が出稼ぎに出ると三人になり、とてもさびしかったが、今では五人なので、前ほどさびしさは少なくなった。けれど父の存在はとても大きいと思う。一人がいなくなると、家の中がすごく静かになる。だから父のいる夏、冬は、できるかぎり父の手伝いをしたい。手伝いをして楽をさせたい。そう思ってがんばっている。
昆布とりは海の機嫌によって大きく左右される。機嫌の良い凪の日は、潮の流れもゆるやかで、昆布がたくさんとれる。でも少しでも機嫌が悪くなると、潮の流れが早くなり、昆布がとれなくなる。僕の手伝いは船の舵を取る事なので、潮の流れ、風向きによって、とてもむずかしくなる。父に何回も 何やってんだ。しっかりやれと怒鳴られた。
そうやって怒鳴られながらも、四時間もの間、海にいる。海から上がったら、昆布を家の前で,昼まで干し、昼からは、集めて乾燥させる。夏は毎日がこのくり返しだ。
僕は、将来のことはまだ決まっていないが、この「海の町、戸井」で父のような立派な漁師になりたい。


