2013年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  柴 愛美

【特別賞】水が森を、森が水を作る

尚仁沢湧水は、環境省選定名水百選に選ばれた栃木県塩谷町と矢板市の境界付近の高原山(釈迦ヶ岳)

山麓標高五百九十メートルの場所にある湧水である。付近一帯は樹齢数百年にも及ぶ原生林に覆われ、

十数ヶ所から湧き出る清冽なる湧水は、四季を通じて水温が十一度前後と一定している。

湧水までは急な坂道を登り始める。景色は抜群で、山の中を進めば進むほど緑の木々がいっぱいで、

とても空気がすんでいる場所。川を渡る橋をこえ、川沿いに山を登っていく。木々の間からこぼれる日の光がとても幻想的で、私は大好きだ。途中、我慢ができなくなって、川の水に手をふれる。夏でも秋でも冷たくて気持ちがいい。岩と岩を流れる水は勢いがよく、辺りはきりでいっぱいになる。

川の底が見えるくらい水はすきとおっていて、少し青く見える。湧水に着くまで歩いて四十分。光があ

まり届かない、たくさんの木が生い茂った場所に、こんこんと湧き出ている。大事な水を水筒やペットボトルに入れる。手が冷たい。そこで飲む湧水は特別な味がする。

湧水の仕組みはどうなっているのだろう。なぜ、水は絶えずずっと出てくるのだろう。これには森林

と土に秘密があるらしい。森林土壌は長い造山運動の結果として、亀裂が多く、隙間が多くなっている。

スポンジが水を大量に含むように、森林土壌も水分を大量に含むことになる。ここに蓄えられた大量の

水は、本当にゆっくりゆっくりと時間をかけて岩石のミネラル分を含ませながら、地下水と呼ばれる地

下の水源にしんとうしていき、それが何十年か経って、再び湧水という形を取って流れ出ては川に合流

していくのだ。

山の土の中をゆっくりゆっくり旅することで、甘くておいしい水になるのだと分かった。

このおいしい水を私は、生まれたときから十二年間飲んできた。今まではずっとおじいちゃんがくんで

きてくれた命の水。病気をしたおじいちゃんはもうくみにはいけない。いつもは行けないけど、今度は私がおじいちゃんに命の水をくんできてあげる番だと思う。 水は木を育てている。

大きく育った木々は森となる。

森は多くの水をたくわえる。

長い年月をかけて再び湧き出る湧水。

私たちの生活になくてはならない大切な水。土地をきれいにすること、森を守ることが、大切だと考
える。

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