【特別賞】いにしえからの水
今年の夏、私の住む町にあったといわれている城について調べた。その城は東郷中島城という。東郷中
島城は南北朝時代から、江戸時代の前まで、現在の東郷中島地区にあったようだ。背には足羽川を、目
の前には東郷荘という荘園を一望できたと考えられている。この時代から、足羽川の水は肥沃な土地を育て、奈良の東大寺の荘園として有名な糞置荘や、東郷荘のコメを育ててきた。
室町時代に、荘園の管理役として越前にやってきた朝倉氏は、この中島城にて足羽川を利用し、物資
の交易を行った。また、豊かな水をひいて、足羽川の豊かな水を基盤に後に「一乗谷の朝倉」という戦国時代有数の大名となっていった。足羽川の水が、戦国大名朝倉氏をはぐくむ源となっていたのではないかと思う。
現在も町でとれる東郷米は、おいしいと評判のブランド米である。毎年八月に開催される東郷の祭り、
「おつくね祭り」では、東郷米でにぎったおにぎりが無料でふるまわれる。祭の名前となっている「おつくね」とは、東郷地区の方言で「おにぎり」のことである。
「おつくね祭り」の名前は、おつくねのコメの一粒一粒を東郷の住民に例えていて、住民が手に手をとって、地域を盛り上げていこうという願いがあるそうだ。私たちの地域の川の水は、コメを育て、人を育て、地域を育てる。
また、私の町には堂田川という小さな川が流れている。川の水はとてもきれいで、鯉も泳いでいる。福
井県の環境整備事業に指定されているため、川の周囲は、昔の面影を残しながらも、美しく整備されて
いる。休みの日には、川べりを散歩する人や、鯉に餌をやる親子連れを見かける。川べりで水の流れる音を聞くのも心地よい。町の人々の心を癒してくれる。
初夏には、夕暮れ時から、堂田川沿いにたくさんの灯りをともし、「せせらぎコンサート」が行われ
る。町のひとは、子どもからお年寄りまで、多くの人が集まり、音楽を楽しむ。堂田川は光の郷愁に包
まれて、本当に美しい。
平成十六年の福井豪雨の際に堂田川の水もあふれ、周辺の家々も被害にあったそうだ。水は時として、
私たちの生活をおびやかしたり、生命をうばったりすることもある。だが、日々の大半は自ら恩恵をう
けて生活をしている。
東郷の城について調べたことがきっかけとなり、東郷の人々の水とのかかわり方について考えることが
できた。わたしの暮らす町東郷にとって、水はとても大事なものである。コメを育てる水、地域をつなぐ水、そして、人々の心を潤す水。


