2007年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  酒向絵美

【奨励賞】水たま君の夏休み

暑い暑い夏休みのある日、水たま君は海に出かけました。ぷかぷか波にゆられてひと休みしようと思っ

たからです。ふと見ると、星のような形をしたものが波うち際にあります。 「空から落ちて来たのかな」

触ろうとすると

「僕はヒトデだよ」

と星がしゃべりました。ひゃっ!とびっくりした水たま君でしたが、ヒトデは、空ではなく海に住んで

いるのだと話してくれました。

水たま君は、海にはどんな生き物がいるのだろう、と興味がわいてきました。 「トビウオなら見たことあるよ」

風がザワザワと教えてくれました。

「おいしい小魚がいっぱいだわ、ヒッヒッ」

と、目を細めながらカモメが言いました。

「貝だったらボクにくっついてるよ」

波から頭を時々出しながら、岩が言いました。

「へえ…なんだかおもしろそうだな。よしもぐって見てこよう」

水たま君は、初めて海にもぐったのです。なかなかうまくいきませんが、くじけず頑張って頑張ってもぐりました。

最初に出会ったのは風の言っていたトビウオでした。大きなヒレに水たま君は少しおどろきました。

「大きな魚に追われると、このヒレで空中を飛ぶんだ」

とひろげて見せてくれました。キラキラときれいな羽のようでした。

次に会ったのは、細長い体でくちばしのようなものがついているサヨリでした。水たま君が目を丸くし

て見ていると

「この長いのは下アゴなのよ、水たま君」

とサヨリがしゃべりました。

「あれ?僕を知ってるの?」

サヨリはにっこり笑って

「水たま君はお友だちよ」

と言いました。向うでキラキラと群れになっているイワシたちも

「トモダチ、トモダチ」

と言っています。

水面にもどった水たま君は、お友だちだと言われたことを岩に話しました。 「そうかぁ、水たま君なら、あの怖いサメにもさわれるかもなぁ」

ホオジロザメは、他の魚たちもとても怖いと言っていました。とがった三角の歯がいくつも重なってい

るそうです。水たま君はサメにも会ってみたいと思い、また海にもぐりました。ドキドキしながらしばらく行くと、サメが姿をあらわしました。水たま君は勇気を出して近寄りました。 「ギロッ」とにらまれましたが思い切って声をかけてみました。

「あのう…さわってもいいですか?」

サメは意外にも

「なんだぁ、水たま君じゃないか。いいよー好きなだけさわって」

…なんだか、ちっとも怖くありません。

「お腹いっぱいだし、水たま君は食べたりしないよ。大切なお友だちだし」

サメはさわるとザラザラしていました。水たま君がなでなでしているうちに、サメは眠くなったようでウトウトし始めました。通りかかったユラユラしたクラゲが 「あら、やっぱり水たま君ね。すごいわね、サメが眠ったわ」 「僕はみんなとお友だちなのかなあ」

クラゲは、

「そうよ、海は水たま君がいっぱい集まっているのよ。いつでも遊びにいらっしゃい」

水面にあがり、また岩に報告しました。

「水たま君はお友だちがたくさんだね。うらやましいよ。またもぐったらお話し聞かせてほしいなぁ」

「うん、いいよ」

水たま君はうれしくなってにっこり答えました。

水面は太陽がまぶしく、もぐり疲れた水たま君は波にゆられながら、眠くなりました。世界中の海を

まわったらどうだろうなぁ…と思いながらゆっくり目を閉じて、水たま君は夢の中にもぐって行きまし

た。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です