【特別賞】私の居場所
私の家からは、歩いて一分程で海へ行けます。そんな「私の海」について考えてみました。
幼いころ、私は海が大好きでした。昔のアルバムを見ても海をバックにしたものが多く目に留まりま す。朝早く海へキス釣りへ出かけた父に朝ご飯のおにぎりを持っていったり、幼馴染みと一緒に白い砂 浜の山を素足で登ったりと、海ではとても大切な思い出がたくさんできました。
ですが、小学校の高学年になると海へは行かなくなりました。行くと必ず服や靴は砂まみれになる し、海の水はしょっぱくて、目に入るとたまらなく痛かったので、プールの方がいいやと思ったからで す。たいした理由ではなかったけど、一年間海に行かないこともありました。
そして、あい変わらず海へは行かないまま、私は中学生になりました。部活動や勉強が忙しく、海の ことなど考えてもいませんでした。
そんな中、我が家にある大きな出来事が起こりました。両親が家庭内別居を始めたのです。毎日毎日 家族にまで気を使う日々。そんな毎日に嫌気がさしました。家族ともだれとも話したくなくて、何もか もが嫌になって、静かに家を出た私は、気がつくと海へ向かっていました。もう何年も来ていなかった のに、砂浜へ立つと海は私を優しい潮風で包んでくれました。久しぶりの海は、懐かしい香りがしまし た。いろいろな思いが込み上げてきて、お気に入りだったテトラポットの上に座った瞬間、涙が出てき て止まりませんでした。それから、長い時間をそこで過ごしました。いつもと同じなのだけれど、いつ もと同じ波の音、体に触れる潮風が心地良く私の心を満たしてくれました。そして、家へ戻るころには 心も体も幾分軽くなっていました。
私はここ数年でいろんなことが変わったけれど、海は相変わらず大きく、優しかった。そんな当たり 前のことがいいようもなくうれしくて、あの日以来、海は私の「居場所」になりました。


