【特別賞】忍野八海を訪ねて
「全国名水百選」に選定されている忍野八海を訪れました。
忍野八海とは山梨県忍野村にある「出口池」、「御釜池」、「底抜池」、「銚子池」、「湧池」、「濁池」、「鏡池」、「菖蒲池」の八つの湧水池です。忍野村は名水の里として知られ、「忍野八海」からは、霊峰富士山の雪解け水が長い歳月をかけて湧き出しています。
水の色は透明で、色々な景色を映しています。どこの湖や池も、見た目にはそう大きな違いはないだ
ろう。そんな私の思いが変わる水の色が、そこにはありました。
はじめて、言葉に表すことのできない深い深い「アオ」を見ました。その「アオ」は、新品の絵の具を
はじめてパレットに広げたときの鮮やかな青でもなければ、多彩な色を混ぜた青でもない。人の手では、作り出す事は不可能だと思える「アオ」でした。
「全国百名水」のいくつかの選定基準のなかで、「良質なものであり、地方公共団体等においてその保全に力をいれているもの」という項目がありました。忍野八海を守るために注意が呼びかけられた看板があちこちに見られました。この美しい「アオ」は、地元の人々が、長年見守り続けている温かい気持ちに支えられているのだということが分かりました。
忍野八海の湧水に三十秒間手をつけるというコーナーがあり、そっと水の中に手を入れてみました。
「一秒‥二秒‥三秒…」想像していたよりもずっと冷たい湧水に、気持ちがいいなと思ったのは束の間
で、その水の冷たさは、まるで私の体温をすべて吸いとっていくようでした。
その時はじめて私は、水と言うものに恐怖を感じました。まるでなにかの修行のような三十秒間でし
た。水から手を抜いても、しばらく水の冷たさが手と心にしみこんだままでした。私は、自然の偉大さをあらためて教えられた気がします。そして、いつも身近にある水の新しい表情が見えた気がしました。
今年の夏は猛暑日が続き、山梨県は二日ほど四十度を超えて、全国一位の暑さを記録しました。忍野
八海の湧水は、そんな夏日がまるで別世界でおきているように、静かに湧き出ていました。
今までもそしてこれからも変わらない、自然が作り出す冷たさと深い「アオ」をまた訪れたいと思い
ます。


