【特別賞】海は何色?
2022年9月11日
学校に行きたくなくなった。 「お母さん、ぼく今日休む」 「ふーん、そう」
意外だなぁ。ダメって言われると思ったのに。何でって聞かれると思ったのに。
「行くよ」
「え?」
とりあえず車に乗る。先客はバケツとつりざおとライフジャケット。
長いドライブ。港に着いた。初めての港。初めてのつりざお。糸をたらす。えさをまく。魚だ。深い 深い海の中。小さな魚。群れで泳ぐ。大きな群れ。小さな群れ。ときどき迷子。
海は青くない。深緑色。おかしいなぁ。海は青いと思ったのに。
「おかしいね、お母さん」
「海?青いよ。今日は海も空も青。来てよかったね」
なぜ?どうして?ぼくには青く見えないの。
「魚はね、食べられたいとは思ってないよね。生きたいと思ってるよね。もっとずっと泳ぎたいと思っ てるよね。大きな群れにいても、小さな群れにいても、迷子になっても。泳ぐ。逃げる。生きる。生き るために生まれるんだよ。学校に行くことで生きられなくなるのなら、行かなくていい」
そっか。そっか。そっか。
海は…青い。空も…青い。ぼくもさっきの小さな魚。ただいま迷子中。でも必死に生きている。青い 海。青い空。生きている証拠、感じた日。生きててほしいと言われた日。
「お母さん、ぼく学校行くよ」
「ふーん、そう」
でもお願い。もう一日休ませて。明日もう一度海が見たい。
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