【特別賞】足
今年最初の水泳の授業。三時間めの体育。私はみんなが楽しそうに泳いでいるとなりで見学していた。 別にお腹が痛いとかそんなんじゃない。私だってプールに入りたい。また泳ぎたい。
数ヵ月前、私は交通事故にあった。原因は相手の不注意。ひどい事故で私は全身打撲に数ヵ所の骨折 をした。特に足の怪我がひどく手術をした。手術は成功したもののしばらくはリハビリが必要だった。 その後、楽に歩けるようになったが泳ぐ事はできない。うまく足を動かせずにすぐ沈んでしまう。溺 れかけた事だってある。こんな足じゃ泳ぐことなんてできない。部活は水泳部に入っていて、事故にあ う前はたくさんの大会に出てたくさんの賞をとっていた。でも部活はずっと休んでいる。
夏休みに入った。私は憂うつでしかたがなかった。事故にあう前の夏休みは毎日のようにプールに 行き泳いでいた。泳ぐことがとても楽しかった。今日まで何度事故の相手を憎んできただろう。事故に あってからの数日は毎日毎日憎んでいた。憎んだって私の足は戻ってこないのに。もう胸がいっぱいいっ ぱいになって何度も泣いた。この先ずっと泳げずに生きていくのは嫌だけど、泳げるようになるのに何 年かかるか分からない。途中で諦めてしまうかもしれない。
そんなある日、私は一人の少女のドキュメンタリー番組を見ていた。手足を失った少女の話。最初は 見るつもりなんかなくてボーっとテレビを見つめていただけだった。でも手足を失った少女の話を見て いるうちに自分が苛立っているのに気づいた。手足を失った少女は必死にビート板を使って泳いでいた。 本当に必死に。昔から大好きだという水泳を手足を失っても必死に。私は一体何をしているんだろう。 泳げないのは全て足のせいにして逃げていただけなんじゃないのか。本当は自分の気持ちの問題なのに。
うじうじしてバカみたい。その時、私の中で何かが吹っ切れた。何ヵ月、何年かかってもいい。また泳 ぎたい。いや、またあの時みたいに泳いでみせる。必ず。
その数ヵ月後、私は二十五メートル泳げるようになった。まだ足の動きはぎこちなくてゆっくりだけ どそれでも二十五メートル泳げるようになった。私の目標は、あの時みたいに泳げるようになること。 まだまだだけど、私は必ず泳げるようになってみせる。


