【奨励賞】給水車ラーメン伝説
2022年9月11日
夕方六時になると、ぼくは日吉小学校に行く。それは自衛隊の炊き出しがあるからだ。おとといはマー
ボナス、昨日は牛丼、そして今日のメニューはラーメンだ!迷彩服を着たいつもの面白い自衛官が、
大盛りのラーメンをくれた。そのスープは落ち込んだぼくにやる気を起こさせる匂いだった。
七月十六日、ひどい揺れが柏崎市を襲った。すぐに自衛隊が水を運んで来てくれた。その水は、トイレ
の水、ご飯の水、洗濯の水、お風呂の水、そして飲み水となって、人々を勇気づけた。特に、うちにとっては弟がアトピーだから、お風呂や洗濯の水がありがたかった。洗濯機は、まるで口を大きく開けた牛ガエルが、ガブガブいくらでも飲むように水を使った。水をくみに行く毎日だった。ぼくは何か悲しかった。それは、家族旅行で粘土から作ったぼくの大切なラーメンどんぶりが、地震で倒れた食器棚の下でバカンと割れていたからだ。
自衛官がくれたラーメンは、近所のラーメン屋のおじちゃんがこねたメンを皆のために使ってくれと
持ってきたものだと聞いた。決めたメニューがあったのにもかかわらず、自衛官はヨッシャーと引き受けてくれた。ぼくはすごい心意気だなーと感じた。山形や各地から柏崎港に船で運ばれた、おいしい水
は、沢山の人が、ぼくにガンバレーと言っているようだった。今はもう自衛隊は撤収してしまった。ラーメン屋の名もわからない。あれは二度と食べることの出来ない、ぼくにやる気を起こさせる、熱血魂の伝説のラーメンとなった。


