2005年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  河田理絵

【奨励賞】ひと夏の・・・

『助けてぇー助けてぇー』

ガバッ。僕は汗をびっしょりかいて息を切らして目を覚ました。窓の外はまだ真っ暗で星と

満月がひかっていた。最近よくこの夢を見る。誰かがどこかで助けを呼んでいる夢だ。でも、

誰がどこでなぜ助けを求めているのかまではわからず、いつもココで目を覚ます。

 

そう、最初にこの夢を見たのは二週間くらい前だ。塾の夏期講習でやったテストがすごく

悪くて志望校はC判定。ライバルのタカシはA判定でムシャクシャしてた。帰り道、草野川

の土手と三日月神社を夕日が染めていた。

「おい、亮太。そんなにしょげるなよ。また次のテストあるし、受験まであと半年もあるんだぜ

たまたま調子悪かっただけだって、な 」そうタカシが言った。

 

でも、今の僕はタカシにそういうコト言われたくなかった。実はライバルだと思っているの

は、僕だけなのかな…。タカシは運動神経も抜群で女の子にだってモテる。僕が、みきちゃ

ん好きなの知ってるから言わなかったんだろうけど、ホントはこの前の体育祭のときコクられ

たっていうの知ってる。そういう思いもあってか、僕はついついキツイ口調で

「タカシはいいよなぁ〜頭もよくてモテるしさ、オレとちがって」

そう言って草野川にまるめたテストをなげつけた。タカシがとめたときにはすでにテストは

流れだしていた。

その夜から毎晩毎晩この夢を見ている気がする。タカシともその日以来塾がないためか会っ

ていない。謝ろうと思ったが自分からメールするのはちょっと気が引けてしまっていまだに

謝っていない。そんなコトを思っているうちに僕はまた眠りについてしまった。

 

辺りは草や木が生い茂っていて、小山からキレイな湧き水が流れていた。僕はその川に沿っ

て下流の方へ歩きだした。遠くの方から声がする。足早に声のする方へと行ってみると、そこ

には見たことのあるような神社がポツンと建っていた。神社の鳥居には‐三日月神社‐と書

かれていた。横には大きな大木が一本。葉がいっぱいついていて、いつも見ているのよりもひ

とまわり小さく見える。そう言われれば、鳥居も赤いペンキのぬりたてのような鮮やかな色

だった。

 

 

…過去…

その二文字が頭を駆け巡る。

『助けてぇー助けてぇー』

 

いつも夢で見ているあの声がきこえてくる。

 

川の上流から白いものが流れてきて、僕はそれをひろいあげた。少し水にぬれてクタクタ

な紙だった。おそるおそるその紙をひろげてみると、それはテスト用紙だった。字がにじんで

名前がよめない。点数は二十八点…そう、そのテストはまぎれもなく二週間前に草野川になげつけた、あのテストだった。 『助けてぇー助けてぇー』

その声はしだいに大きくなっていき、次から次へと上流の方からゴミが流れてくる。流れてく

るたびに木や草が減っていき、川の色がにごっていく。僕は無我夢中で川にとびこんでゴミを

ひろった。でも、必死になってひろえばひろうほどゴミが流れてきて追いつかなくなってしまっ

ていく。

 

ピピッピピピピッ

目覚まし時計がなった。窓の外はもう明るくて小鳥たちも鳴いていた。僕は飛び起きてタカシに電話をした。

「オレ、オレ亮太。おまえ今日ヒマ」

「えっ……あっうん」

「じゃあ、すぐに軍手もって草野川集合なッ。絶対来いよ」 「あッああわかっ……ツーツーツ」

なんだアイツイキなり電話してきたかと思ったらイキなり切ったりして。まぁいっか。

さぁ、準備準備。って軍手って何につかうんだよ

そう思いながらタカシは家を出て行った。

 

亮太はゴミぶくろを片手に草野川に向かってかけ出した。土手にタカシが見えた。タカシ
に会って一番に言ったことは、 「ごめん。この前はごめんなッ」「こっちこそ、悪かったよ、ごめん」 二人はとびっきりの笑顔で仲なおりした。 「んで、軍手って何につかうんだよ」

「あ〜えっと、この前川にテストなげちゃったから、ゴミひろいしようと思ってさッ。」そう言っ
て二人で川のゴミをいっぱいひろった。 『ありがとう。助けてくれてありがとう』 あの声が僕らにそう言った。僕も草野川に 「もうゴミなんてすてないよ。ごめんね」 と優しくつぶやいた。

「おい、亮太なにニヤニヤしてんだよ。そいゃー言い忘れてたけど、体育祭のトキ、みきちゃ

んに亮太の好きな子教えてくれって。亮太のシャカリキスマイル好きなんだって」

そんなコト言うから恥ずかしいくらい赤くなっちゃった(笑)。これが僕のひと夏の思い出。

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