2015年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  臼居 芳美

【特別賞】あさりとしじみのなげき

学校から、帰ってくるとキッチンからいいにおいがただよってきた。食いしんぼうのぼくは、たまら

ず、キッチンにかけよっていく。

「あら、雄太。おかえりなさい。今日はね、雄太のだい好きなあさりのおみそ汁よ。おいしそうなあさ

りが売ってたのよ」

と、ママは、なべにみそをとかしながら答えてくれた。

ばんざーい、と、ぼくは、うれしくなってなべをのぞきこんでしまう。ぼくは、みそ汁の中でも、あ

さりやしじみなどの貝のみそ汁が大好物だ。ふっくら、つやつやしたいきのよさそうなあさりは、いつ

も気持ちよさそうに半分口を開けて、ボールの中でねむっているように見える。時々、いたずら半分に

つっつくと、ぴゅっと海水をはきだし、あわてて貝の口をとじる所なんか面白い。

「こんなちいさな貝でも、まるでちゃんとした意見を持っているみたいだね」 と、ぼくが言うと、ママもふかくうなずいた。

「そうよ。きっと、あさりくん達も、最近の海や川のよごれにひどさになげいているのよ」

と、ママは説明してくれた。

ママのママ、つまりぼくのおばあちゃん達の時代、あさりやしじみなんか、大量に手に入れる事がで

きたんだそうだ。朝、浜べに行って、ちょっと砂をかくと、みそ汁に入れるぐらいのあさりは簡単に手

に入れる事ができたそうだし、川も泳げるほどきれいだったので、しじみもバケツ一ぱいぐらい取れた

そうだ。

ぼくは、その話を聞いておどろいてしまった。昔、おばあちゃん達の時代、便利な物は、今ほどな

かったかもしれないけれど、豊かな自然は残っていたので、食べ物に関しては、今よりずっと質のいい

食べ物が手に入ったんじゃないかと思う。今、質のいいあさりやしじみは、スーパーで見ると、わりに

高い値段がついているもの。

ぼくには、あさりやしじみ達が相当なげいて、怒っているように思えてきた。

小さな生き物の彼らだけど、あさりやしじみ達が安心して生きられる、豊かで、美しい海や川や湖を
とりもどし、守るよう努力する事。それは何よりも大切なことのように思える。 一ぱいのみそ汁の中にも、自然の恵みがきちんといかされているのだなぁ。

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