【特別賞】あさりとしじみのなげき
学校から、帰ってくるとキッチンからいいにおいがただよってきた。食いしんぼうのぼくは、たまら
ず、キッチンにかけよっていく。
「あら、雄太。おかえりなさい。今日はね、雄太のだい好きなあさりのおみそ汁よ。おいしそうなあさ
りが売ってたのよ」
と、ママは、なべにみそをとかしながら答えてくれた。
ばんざーい、と、ぼくは、うれしくなってなべをのぞきこんでしまう。ぼくは、みそ汁の中でも、あ
さりやしじみなどの貝のみそ汁が大好物だ。ふっくら、つやつやしたいきのよさそうなあさりは、いつ
も気持ちよさそうに半分口を開けて、ボールの中でねむっているように見える。時々、いたずら半分に
つっつくと、ぴゅっと海水をはきだし、あわてて貝の口をとじる所なんか面白い。
「こんなちいさな貝でも、まるでちゃんとした意見を持っているみたいだね」 と、ぼくが言うと、ママもふかくうなずいた。
「そうよ。きっと、あさりくん達も、最近の海や川のよごれにひどさになげいているのよ」
と、ママは説明してくれた。
ママのママ、つまりぼくのおばあちゃん達の時代、あさりやしじみなんか、大量に手に入れる事がで
きたんだそうだ。朝、浜べに行って、ちょっと砂をかくと、みそ汁に入れるぐらいのあさりは簡単に手
に入れる事ができたそうだし、川も泳げるほどきれいだったので、しじみもバケツ一ぱいぐらい取れた
そうだ。
ぼくは、その話を聞いておどろいてしまった。昔、おばあちゃん達の時代、便利な物は、今ほどな
かったかもしれないけれど、豊かな自然は残っていたので、食べ物に関しては、今よりずっと質のいい
食べ物が手に入ったんじゃないかと思う。今、質のいいあさりやしじみは、スーパーで見ると、わりに
高い値段がついているもの。
ぼくには、あさりやしじみ達が相当なげいて、怒っているように思えてきた。
小さな生き物の彼らだけど、あさりやしじみ達が安心して生きられる、豊かで、美しい海や川や湖を
とりもどし、守るよう努力する事。それは何よりも大切なことのように思える。 一ぱいのみそ汁の中にも、自然の恵みがきちんといかされているのだなぁ。


