【奨励賞】水からの贈り物
2022年9月10日
今年はとうとう水着にもならなかった 受験生の夏
川岸の岩に一人座わり
川の流れに足をまかせる水の冷たさが
頭のてっぺんまで上がって来る ザブーン
キラキラ光る水しぶきと笑い声
水の冷たさが幼い私の夏へ案内してくれた
真っ黒のいとことやせっぽっちの私 この水の冷たさも、あの頃は何ともなかった 泳いだり、水かけっこしたり メダカをつかまえたり
遊ぶことは何でも良かった
この川も水も太陽も
すべて自分達の物だった
やりたいことに終わりはなかった パシャパシャ
容赦なく泳ぐ私達に
困った顔で眺めていた鮎釣りの老人 近づいて釣籠を覗くと
ゾクッとする程の鮎が重なり合っていた 一匹もらってバケツに移そうとした時 スルッと私の手をかわし
ポチャン
再び命を吹き込まれた勢いで
川の中へと帰っていった
いとこが突然泣き出したから私は泣きたい気持ちを飲み込んだ
鮎のぬるぬるした感触だけが
帰り道のお土産だった
たくさんの時間を
この川で過ごしてきた
幼い私達の自然の教科書だった
いつもこの川に励まされてきた 命の源は留まることをしらない 不安を洗い流すかのように 前へ前へと背中を押すかのように 私の体に鋭気を養う
私の心に勇気を与える受験生の終わらない夏に
水しぶきのエールが光り輝いた


