2010年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  ナカニシ カオリ

【ざぶん文化賞】小さな水たまりの大きな幸せ

ある日、大雨が降りました。すると、森の中に小さな水たまりができました。

翌日、小さな水たまりは考えました。

「僕は、他のみんなのために何ができるだろう」

しばらく考えていると、うさぎさんがやって来ました。

「私、のどがかわいちゃったの。少し飲んでもいいかしら?」

うさぎさんが言いました。

「どうぞ、どうぞ。僕は今、みんなに何かできないかと考えていたんだ」 水たまりが言うと、うさぎさんは、

「ありがとう。それじゃ、少しいただくわね」

と、少しだけ水たまりの水を飲んでいきました。

「よかった。こんな僕でも役に立てた。うさぎさん、うれしそうだったなあ。僕もうれしい

や」

水たまりは、とてもうれしくて幸せな気持ちになりました。すると、森のしげみの中から

狸君が出てきました。

「ああ、のどがかわいたなあ。あっ、水たまりがある!飲んでいいか?」

狸君が言うと、水たまりは、

「どうぞ、どうぞ。僕はさっき、みんなに何かできないかと考えていたんだ」

狸君は、

「ん?そうか!それじゃ、少しいただくとするか!」 と言い、水たまりの水を少し飲んでいきました。

「よかった。こんな僕でも役に立てた。狸君、うれしそうだったなあ。僕もうれしいや」

水たまりは、とてもうれしくてかなり幸せな気持ちになりました。でも、そのかわりに水

たまりはとても小さくなってしまいました。その時、熊おじさんがやってきました。

「おお、あった。水たまりだ。だが、かなり小さいな。水たまりさん、悪いが、わしが飲ん

でもいいかね?」

熊おじさんが言うと、水たまりは、

「どうぞ、どうぞ。僕の幸せはみんなが僕を飲んで幸せになる事です。あなたが幸せになる

なら、どうぞ飲んでください」 と言い、熊おじさんは、

「ごめんなあ。それじゃ、いただくよ」

と、水たまりの水を全部飲んでしまいました。その時、水たまりはすごく幸せでした。小

さな自分でもみんなの役に立てたのだ、自分の体が無くてもこの幸せはずっと消えないだろ

うと、一瞬思いました。
いつかあなたの近くに水たまりができたら、呼びかけて下さい。

「幸せかい?」と。きっと「幸せです」って返事がくるはずですよ。

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