2006年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  北村 紗希

【奨励賞】Sleep in the Sea

透き通った感覚が全身を包みこんでいる

まどろんだ視界を開いて見つめる先には、

淡く深い世界が広がっている

安らいだ心の中で、ずっと眠っていた気がする 静かな世界の真ん中には波の音があった

耳に届く鮮やかで落ち着いたその音は

不思議な香りまでもっていたっけ

そんなことに意識を傾けつつ、水の中を落ちていく 優雅に揺らめく水面を求めることもなく

彼は落ち着いた流れに身をまかせていた

暖かく、冷たい

癒しと眠りが水にとけこんで、自分に染み渡っている

怒りも恐怖も、そこには存在しない

海の塩からさがとろりと甘く水面から差しこむ光のすじが神秘に周囲を飾り照らす

その無数の暖かい日のスポットライトの中を

小さな魚の群れがくぐりぬけていく その鱗一枚一枚が光をあびてきらめく姿は

この世のダイアモンドよりまぶしく サファイアよりもはるかに美しかった
日の光も宝石の輝きも消えたとき

目の前に広がっていたのは

漆黒の夜空を映した静寂な世界だった それでもあの波の音だけは変わらなかった ただそれだけ

それだけがこの静寂な世界の沈黙を破る いったりきたり、切ない水のコーラス

彼の夢は、あの海が続く限り終わらない

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