2006年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  林 香君

【特別賞】かけがえのない海

私にとっておじいちゃんはかけがえのない存在だった。

たった一人のおじいちゃんで、いつも私のなやみや話を聞いてくれた。

私とおじいちゃんは海が大好きだった。

昔はよく二人で海へ行っておしゃべりをしていた。

おじいちゃんはよく海の話をしてくれた。

「海は戦後の沖縄を支え、優しく見守り、人々の心をいやしてくれた。 心に深く残った悲しみ、苦しみ、辛さを少しずつふきとってくれた」 と教えてくれた。

「・・・海はキレイだなぁ。おじいちゃんもよく海に来たもんだ」

その日、初めて私はおじいちゃんが体験した戦争の話を聞いた。 いつもニコニコ笑ってるおじいちゃんの顔が、

その時だけは厳しい表情に変わっていた。

おじいちゃんの話は私にとって辛く、衝撃的なものだった。

でも、おじいちゃんは

「この海を守って良かった」

と言っていた。

「おじいちゃんも戦争でいろんな体験、辛い思いをしてきたんだ。 ・・・でも、海に助けてもらったんだ」

今ではおじいちゃんも白いサンゴになってしまった。

私はとても辛くて、悲しかった。

でもおじいちゃんは、夏の太陽の日ざしを浴びて白く光る砂浜のように、

キラキラ輝いてキレイだった。

「ザァー、ザァー」

海は私に話しかける。

「辛いときはいつでもおいで、話においで」

・・・私にとってかけがえのないおじいちゃんは、海になった。

この世界に、この地球にたった一つしかない、かけがえのない海になった。

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